次回の出展で再販するということで、 攻城ペンギン・デザイナーズノート。 一重に、孤独の恐ろしさを思い知った制作だった。 はじめ、このゲームはペンギンでも攻城でもなく、 「リングオブレッド」というプレイステーション2のソフトに インスパイアされて作っていた戦争ゲームだった。 その頃はまだ"ぼくのかんがえたバトルライン"の粋を出ず、 二足歩行メカと随伴歩兵の組み合わせによって区画の戦力が決まり、 都市の制圧権を決めるというもので、唯一この頃から残った アイディアと言えば「占領するまで都市のポイントが分からない」 というルールぐらいだった。 今考えてみると、自分の作風からすればこっち。 もう一度機会をくれってぐらい、メカ+随伴歩兵のゲームを 出したいと思ってる。 実はかなりの完成を見て、何故かこのメカミリタリ企画は凍結された。 それは何故か!? ショーナンロケッティアズの制作技術が低く人員もソロ上等だからだ。 特にグラフィック面と梱包面での問題が多く、 グラフィック面では、 メカをドット絵で起こすのが困難なため、 タミヤの歩兵プラモデルとブロックメカ玩具を組み込んで トリミングする予定だった。(というか趣味でかなりのとこまでやってた。) 梱包面では、どうしても濃い緑色の工兵ケースっぽいものに入れたかった。 1年目をようやく乗り越えたショーナンには、 制作費が掛かり過ぎ、そこまでやるのはまだ博打だった。 今でもちょっと博打だ。 それから少し経って、 2年目の出展ゲームを本格的に考えていた頃、 唐突に「攻城戦」と「ペンギンが出るゲーム」というお題が浮かぶ。 「攻城戦」は、以前からとても気になってるボードゲームの1つ ストラングルホールドからきていて、その前年に たまたま見た映画「墨攻」からも影響があったと見られる。 また、電源ゲームにおいて攻城戦の思い出といえば 光栄の「項劉記」と「三国志4」であり、 両作とも凝って造られた攻城戦が逆にアダになって テンポの悪いゲームになっているという「攻城戦」に関しての 悪い印象があった。逆にそれが自分の「攻城戦」への挑戦を掻き立てた。 「ペンギンが出るゲーム」とは、とどのつまり みんなが大好きで私も大好きな「ペンギンパーティー」のことである。 ああいうテーマ性をド無視してペンギンを登場させるゲームを 作りたいというライナークニッツィア氏への歪んだリスペクトが 私を掻き立てた。 オインクゲームズさんが「さるやま」を発表して私がツイッターで 慌ててたのはこの流れに起因する。 二つのお題はそれぞれ違うゲームとして制作が始まったが、 お風呂に入ってるときになんとなく「同じにしちまっていいんじゃね」 という結論に行き着いた。 そこで「攻城ペンギン」の名前があっさり決定する。 コンポーネントも前年のウォールヅ・フラッシュノットのノウハウだけで カード30枚までという制限で制作が始まった。 ルールに関しては、 「攻城戦」の「城」をいかに表現するかという課題があり、 当初は守備側の東西南北の城門を守るという4面分兵のゲームになった。 ちょっとこれでは枚数を使い過ぎるということで、 大概の城は山や川を背にし半分が天然の要害だろうという 一般的な「城論」を取り入れて「ある三面の城壁」にスポットを 当てる攻城戦にすることとした。 勝利条件は当初から「10を取るゲーム」に決し、 城壁ポイントは前述のメカミリタリゲームの占領ポイントから受け継ぐ形となった。 ここからが地獄の始まりだった。 1~5というカード編成は初期から決まっていたものの、 それを全種2枚づつ持つだけでは"均等な戦力がぶつかるゲーム"になってしまう。 攻城戦とは"不平等でなくてはならない"という戦シミュ脳が大きく働いた。 攻城戦の醍醐味とは即ち "守備兵を一方の城壁へと釘付け、手薄になった一方を徹底的に崩す" というものではなかろうかと。 要するに守備側は効率よく迎撃する、攻撃側は守備側を無駄に力を使わす。 こうではなかろうかと。 そのためには数字上では守備側を3~4割方有利として、 攻め側も平均で1城壁突破、運が良くて2つ、べらぼうに冴えてて全突破 ぐらいのバランス調整を施す必要があった。 毎日夜中にトランプを使用してのテストプレイが始まった。 毎日毎日独りで回した。 これが二週間ぐらい続くと、目標としたバランスは見えてくる 代わりに、そもそもこのゲームって面白いのか?という疑心が沸く。 さすがに1~5のカードを並べて 公開するタイミングだけのゲームから脱したくなり、 「援軍」の要素を付け足すこととなる。 相手がどのタイミングで援軍を繰り出してくるかという、 脳内シミュレートの難度を引き上げる結果にもなり、 再度のソロテストプレイの日々は苦難を極めた。 毎日毎日独りで回し、 これが二週間ぐらい続くと、ちょっとイカれてくる。 新要素は悪くは無かったが、それでもこのゲーム面白いのか? という疑心暗鬼は深まる。 さらに「切り札カード」という要素を加える事にした。 CSでタイムボカンを見ていた時に「今週のビックリドッキリメカ!」 のくだりから着想を得て付け加えることとなった。 ちなみに好きなボカンはオタスケマンで 好きなタツノコはテッカマンブレード。 これらは更に脳内シミュレートの難度を引き上げた。 再度のソロテストを繰り返し、 毎夜毎夜独りでカードをいぢり回していると、いよいよイカレる。 4人用ぐらいまでのボードゲームならソロで回しても楽しめるんじゃね? という、とんでもない狂人を生む結果となった。 もはや何をやっても面白い。ダイスを振るだけでも面白い。 これはヤバイと思い、 一度マニュアルの方に着手して、 完成したマニュアルをネット経由で巻いて 誰かしらにやらせてみようということになる。 そこで白羽の矢が立ったのは 長崎の怪人・きむぺ氏。 マニュアルを転送し、トランプを代用してのテストプレイを依頼。 スカイプを通してプレイ実況をする中、これといった問題は発見されず、 人とやっても正常に回ることが証明された。 次なるはゲットマン。 通称ゲットマンボードゲームエミュレータは、 マニュアルをひととおり読んだだけで脳内で駆け引きを算出するスグレモノ。 ここで引き出された結論は「切り札カード」の内容不足。 この助言により、「相手に増援を強制的に使わせる」選択が追加される。 ここで一度の完成を見たので、 カードデザインに着手となった。 週末は図書館に篭り、ペンギンの本を読み漁る。 特にネームバリューの高い種族を選出して 参戦するペンギンを決めた。 その途上、守備側と攻撃側それぞれのボスはどうするか という問題にあたり、ペンギン最大の大きさを誇る エンペラーペンギンとキングペンギンに決定した。 皇帝と王、 なんとなく中華vs西欧という構図が浮かび、 守備側のペンギンの装備は中華風 攻撃側のペンギンの装備は西洋風となった。 カード内の情報は数字だけでよかったため、 かなりのスペースを"あそび"に費やせた。 それがフレーバーテキストだ。 これが実は一番やりたかったことでもあり、 このテキスト内容が表す黙々とした戦史は、 私の大好きな「ゾイド」のストーリーテイストだ。 言ってみれば、「ペンギンでゾイドがやりたかった」 攻城ペンギンはまさにこの一言に尽きる。 元々はメカミリタリなカードゲームであったため、 メカミリタリの遺伝子はここで発揮されることになる。 制作末期。 新技術の円形クラフトパンチと、ケシゴムハンコがもたらされた。 その新技術を使用し、ペンギンメダルが完成する。 これがペンギンハンコ。 手作り感満載のショーナン図画工作を象徴するアイテムだ。 そんなこんなで完成に至るのだが、 この後、一週間ごとに疑心暗鬼に陥っていたため、 出展当日まで面白いものを作ったという実感は一切無かった。 むしろ他の物を作って紛らわせようぜぐらいの勢いで、 手を動かして紛らわす一方、 ペンギンゲームフリークにぶん殴られたらどうしようという ビビりっぷりで数ヶ月も過ごした。 ■攻城ペンギン制作■ ・ルール・カードデザイン・マニュアル・生産 えーおーあい ・テストプレイ きむぺ ゲットマン
by souka_t
| 2012-09-01 21:05
| 同人ゲーム制作
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Comments(3)
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