■#14 ミクとサク■
「ピアさんのお部屋ってイスでいっぱい」 「たくさんの子供達がいらっしゃるのでしょうね」 目の前の女性のピグがそう言った。 少しの謙遜に少しのユーモアをブレンドして、 さらりとした言葉でそれに答えた。 「わたしも子供達ともっと仲良くしたいな」 女性のピグが物悲しげにそうつぶやくと、 それはきっと可能であると調子良く答えた。 「わたしにもできるかな?」 簡単であると即答した。 「でもね、今日とっても悲しい事があったの」 「ゲーム知ってる?」 「ピグ内で2人でやる、ペアの数字合わせゲームっていうのかな」 「それをわたしとそこにいた子供といっしょに遊んだの」 「そうしたらね」 「わたしトロいものだから、とても迷惑かけちゃって」 「いっしょに遊んでいた子から「馬鹿 死ね」って言われて」 「その子消えちゃったの」 ここに神奈川県で4番目にリトライに強かった人がいるから、 またやればいいさと答えようとしたが、解除する数字が無い事に気づき それはやめて、その子もいずれは情を知る事になるさ、と、 年輩の色香を仄めかした。 「どうしてインターネットだと人って怖くなっちゃうんだろうね」 「さっきも、ピアさんにギフトをせがんで怖いこと言ってた子いたよね」 「ピグって楽しいものだと思っていたけど」 「とても怖い」 不思議だよね、と、一言。 それに続けて、このヒゲ顔を第一印象で実際の顔と思っているほど、 ピグと現実を混同している節がある事と、ホストクラブごっこといった 変に現実を模倣したことを非現実的な空間で展開する事、 それらを歪んだ背伸びだとまとめた。 「どこで覚えてくるのかな」 「わたしなら、自分の子供にも教え子にもピグさせたくないな」 率直に、その根源は母親であると答えた。 どのような玩具を与えようと、いずれは飽きる。 どのような話を読み聞かせようが、いつまでも語り部役はできない。 インターネット、強いてはピグは、便利な保育所のようなものさ。 と持論を説く。 「なんだか、かわいそう」 ピグに潜む悪い人間の存在について、 つい、語ってしまう。 「え・・・小学生なのに?」 「まだ身体だってできてないのに何をするの」 現実を教えた。 そして、時間は大きくさかのぼる。 タケルのロリコン疑惑が浮き彫りとなったあの瞬間に話を戻そう。 「なるほど、姉上のリアル彼氏ならば諦めねばなりますまい」 「よしよし」 「あきらめるんだゾ弟」 大変面白いことになってきたので、次の行動を起こそうと私は部屋へと戻った。 部屋の上座に座すと、ピグトモ用のメッセージウインドウを開く。 ピグでは18歳以上に設定した者同士がピグトモになると、 当人同士でしか見えないひそひそ話が出来る。 「このロリコンの国のロリコン領を割渡されたロリコン公爵め」 「な、なんですかいきなり」 「聞いたぞ、あの小娘。タケルのリアカノだってなあ!!」 「やるでねえの、虫も殺せない聖人面で」 「やることはなかなかのモンスターハンターポータブルでねえの」 「ちなみに俺モンハンやったことないけどさ」 「ちょっとやったら負けだと思ってるけどさ」 「はは・・・ ばれちゃいましたか」 「リアカレと言っても実際に会った事はないですけどね」 「ちなみにぼくもモンハンやったことないですね」 「とりあえず、全部聞かせてもらったぜ。事情はどうあれ本気かね?」(ブラフ) 「そうですか・・・全部ですか」 「もしかしたらピアさんにも相談するかもしれません」 「事実はどうあれ、ぼくが止めなくてはならないと思います」 「危険だしな」(んん???) 「はい、遊びの感覚でやってるようなので・・・」 「相手は高校生や小学生を買うような奴ですから」 「事と次第によっては警察沙汰だな」(なん・・・だと?) 「はい」 「今日はもう寝ます。なにかあればまた報告します」 驚くべき展開がやってきた。 明らかな犯罪臭。 求むるべき劇的な場面が近いことを実感した。 それではと、来るべき時に備えて情報収集を実施することにした。 まずはあの小娘のプロフィールにあったブログを漁る。 見てみると記事の総数はことのほか少ない。 当時8記事、実は現存していて今は13記事。 内容は、バッタと喧嘩した、仲間を守った、ピグのスクリーンショット。 それと、"スイレン"という小説を読んだ という記事がある。 前者3つはタケルとのツーショット写真がなにげなく載せられている という微笑ましい点以外は見るべきところも無く、強いて言えば ピグ内での交流の広さを思わせる。 けれど印象深いのは小説を読んだ感想の記事だ。 異様に力が入ってる。まず他と比べて文が長い。 次にフォントや顔文字の装飾が少ない。 最後に、ハンドルネームと一致する非偶然性。 登場人物にかなり入れ込んでるような文面だったが、 名前までその話に合わせるのはどうもうすら寒いものを感じる。 言ってみれば中二病というやつだ。 丁寧にもその小説のあらすじまで書かれている。 そのあらすじからすれば、恐らく・・・ケータイ小説。 余命わずかの男女の恋路とドメスティックなバイオレンスが 書かれているらしい。まるでテンプレートのようだ。 だが、そういう王道こそが、容易に受け入れられるのだろう。 以前の誰彼かまうことなく見栄えの良い男ピグを抱え込む行動、 ピノという男ピグへの恋路に敗れ憤慨していた様、 小説への陶酔、 大きく歳の離れたタケルへの想い、 犯罪臭。 ここで一つの推論に行き着いた。 読者諸君はお気づきだろうか、同時期に起きたこれらのイベントに 潜む矛盾と滑稽さ。 アヤツジ先生のような解決編は無いけれど、考えてみて欲しい。 それから一週間と間をおかず、 突然水恋が自分のピグ部屋に来訪した。 「やあ姉上、よくいらっしゃいましたね」 「ちょうど我が故郷のトスカーナからレモンが届きましてね」 「ティータイムと洒落込もうと思っていた次第ですよ」 ハプスブルク家に婿入りした貴族の中の人は、 リプトン・レモンティーの粉袋からサジ2杯をカップに 落とし、今まさに湯を注ぐところであった。 「弟」 「いえ」 「ピアさん」 「あの」 「お別れを言いにきました」 「どういうことですか?」 「わけは」 「聞かないで」 「1つ」 「おねがいがあります」 「聞きましょう」 「タケルにあったら」 「つたえてください」 「ずっと愛してる」 「と」 「本当に伝えていいんですか?」 「タケルの幸せを」 「ずっと」 「ねがっているって・・・」 「つたえて・・・」 「タケルとももう会わないんですか?」 「・・・あったら」 「離れられなくなるから・・・」 「分りました 伝えましょう」 「ありがとうございます」 「Pとも」 「やめるか」 「やめないかわ」 「決めていいです」 「はい」 「それじゃあ」 「また」 「あう機会があったら・・・」 またしても唐突の展開。 おじさんの搭載エンジンはノーマルマブチモーターだけど、 君達の搭載エンジンはハイパーダッシュモーターだな。 と、大会で使用禁止令が出るほどの規格外の速度で 展開する若者の気の移り様はいかがなものか。 そりゃミニ四駆も廃れる。 ポケベルも廃れる。 コミックボンボンも廃刊する訳です。 身も蓋も無く言えば最注目のヲチ対象の消失は 如何ともし難く、であり。 3000ポイントの終着点に達するまでにはあまりに退屈過ぎる。 そんな悲観に打ちひしがれて15分。 再び水恋が部屋に訪問。 「あの・・・」 「やっぱり・・」 「つたえなくていいです」 「いいんですか」 「いいです」 「・・・」 「はなれたくない」 「でも」 「これだけつたえてください」 「愛してる」 「って」 「これだけでいいです」 「わかりました」 「さようならはいいません」 「また明日」 「はい、また明日」 「ちなみにどうして気が変わったんですか?」 「自分で書いた」 「ブログみて」 「タケルと離れる自信なんて」 「ちっともない」 「そんな勇気はわたしにはない」 「と思ったので」 「これからもタケルとずっといる?」 「友達として」 「います」 「そうなりますか」 「はい」 「じゃあね!!」 女心を秋の空と解きますが、 秋の空とて15分おきに雨と雪と豚に変わるわけではない。 もはや意味が分らない。 だが、わずかながら会話中にヒントを残していた。 あのブログ。 確かにもう1つ変わった内容があった。 それは小説の感想の4日前に投稿されていて、 "スイレン"とだけ書かれたタイトル。 内容は「今恋してます!」というなんとも青臭い内容。 しかしそれも長く続かないかもしれないことをほのめかしている。 だいたいこの時から一ヶ月前ぐらいの記事だったか、 この内容がタケルとのことならば、少なくとも一ヶ月間は 公称リアカノ・リアカレの関係ということになる。 自分が会ったのはだいたい一週間前。 あの時の様子を思い出して欲しい。 これは飛んだクワセモノを見つけたと確信し、 更に数日の時間が流れる。 なんとなくタケルと同じ場所へと移動すると、 既に水恋と数名のスイレンチルドレンとが なにやら辛辣なムードで話をしていた。 その時のログをたまたま残しておいたので、 ここに公開しよう。 これがこの一件の結末だった。 この後すぐに、水恋は謎の3ヶ月間ピグ禁止令が下される。 その際に散り散りとなったスイレンチルドレン達を率いて 巨大なアクと戦う話は、また別のエピソードで語るとしましょう。 -この時期の所持アメ 1010 - 時間をまた戻そう。 嘘を引用してあの子をピグから解放した あの瞬間に。 "さな"というピグが部屋に訪れると、 すぐに彼女はこう言った。 「ピアさんのお部屋ってイスでいっぱい」 「たくさんの子供達がいらっしゃるのでしょうね」 「ちょっと入ってきてすぐにどこかに行ってしまうさ、 ニワトリの脳を持った渡り鳥のようにね」 「わたしも子供達ともっと仲良くしたいな」 「さな本業だし、ピアさんなんかよりよっぽど扱い方心得てるじゃない、きっとできるさ」 「わたしにもできるかな?」 「ああ、イージーさ」 「でもね、今日とっても悲しい事があったの」 「ゲーム知ってる?」 「ピグ内で2人でやる、ペアの数字合わせゲームっていうのかな」 「それをわたしとそこにいた子供といっしょに遊んだの」 「そうしたらね」 「わたしトロいものだから、とても迷惑かけちゃって」 「いっしょに遊んでいた子から「馬鹿 死ね」って言われて」 「その子消えちゃったの」 「ガキンチョは言葉が汚いからなあ、うんこちんこ大好きだしな、 それがいずれ気恥ずかしくなって後悔するさ。大目に見てやろうぜ」 「どうしてインターネットだと人って怖くなっちゃうんだろうね」 「さっきも、ピアさんにギフトをせがんで怖いこと言ってた子いたよね」 「ピグって楽しいものだと思っていたけど」 「とても怖い」 「不思議だよね」 「このヒゲ面を本当のピアさんの顔だと思って近寄ってくるから」 「50~60歳と思ってるらしくて、小4だって教えてやると驚くんだ」 「それもさすがにないよね」 「ホストごっこをするガキンチョも滑稽だよね」 「あれ元締めみたいなのがいてさ、本物の下っ端ホストが ホスト経営ごっこをはじめて、それでガキンチョを課金アイテムで釣って アゴで使ってる訳だ、普段アゴで使われている分ね」 「滑稽そのもの。そんなものに背伸びをしてオトナぶりたいガキンチョ達」 「本当にゆがんだ背伸びさ」 「どこで覚えてくるのかな」 「わたしなら、自分の子供にも教え子にもピグさせたくないな」 「親子でピグやってるのをたくさん見てきた」 「学校から帰ってくると子供、夜遅くは母親に代わる」 「親公認の遊び場。与えたのは親自身だと思うね」 「ピグに放り込んでおけば手間が掛からないからね、そしてお友達もピグに誘う」 「なんだか、かわいそう」 「そう、かわいそうさ」 「ピグには悪い人間も潜んでいる」 「裏では売春斡旋の温床さ」 「小学生だろうと中学生だろうと、その背伸びしたいお年頃な心情を利用されて、 餌食にされてしまう」 「え・・・小学生なのに?」 「まだ身体だってできてないのに何をするの」 「生理が始まってないほうが好都合な人だっているさ」 「最低・・・」 「わたしピグやめようと思う」 「ピアさん教えてくれてありがとう」 「うちの園でもやらないようにって教えるね」 「ああ、そうしたほうがいい」 さなはログアウトした。 「そう、こんなものはやめちまうのが一番さ」 -この時期の所持アメ 2550 -
by souka_t
| 2012-02-27 18:56
| 長期レポ
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Comments(4)
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