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アメーバピグの約半年間10
■#10 ギフト乞食ラム■

夕凪のような時の流れを享受していました。
手が空くと"なんとなくログインしてしまう"
この惰性こそが、アメーバピグの、強いては
ネットコミニュティへのコミットであり、
恐るべき魔性です。
アメ3000という目標が唯一私を"こちら側"に留める
鎖でした。日に何人ものピグが私の部屋を訪問し、
世間話から趣味の話と狭く薄い話題で談笑し合う、
そんなゆるやかな日々が続きます。

しかし、永遠なる平穏などこの世に存在しないのです。
そう、ピグの世界においてもー。
あの小娘がいきなり本性を現した日の話をしましょう。

【蘇州の歌う海賊】時代、興味深そうに海賊船へ近づき、
奇抜な挨拶を交わしほどよく打ち解けた
少し高飛車な雰囲気を放つ少女がいました。
その名をラム。
小学5年生にして毎日のようにアメーバピグに入り浸る
廃人予備軍。蘇州の歌う海賊団が活動縮小した頃も、
いつも決まった時間帯に私の部屋に現れては
一言二言短い会話を交わして違う場所へと去っていく、
典型的な落ち着きの無い子でした。
大抵こういった子の名前は覚えず、私からすれば
モブ化してしまうのですが、この少女の行動は
面白いほどに習慣的であったためその名前が
事件前より記憶されます。
そして、あの日・・・
ラムがいつも通りの時間帯に私の部屋へとやってきます。
この時は偶然私だけ部屋にいました。

「こんにちわ」

「やあ、よくきたね まあ座りなよ」

「ピアさん」
「わたしに」
「ギフトをください」

「え?」

「もう一度言います」
「ピアさん」
「わたしに」
「ギフトをください」

「ギフトですか」

「そうですねぇ」
「服がいいです」
「服ならなんでも」
「150アメG」
「ぐらいのが」
「いいです」

「え?」

「早くください」
「わたし」
「いそいでますので」

「ええと」

「なんでもいいです」
「服なら」

「その、質問いいですかね」

「はい」
「なんでしょう」

「ギフトってなんですかね?」

「は?」
「わたしに」
「くれればいいのです」

「いや、その、ギフト自体よくわからんのですがね」

「知らないふりは」
「やめてください」
「あなたは」
「ピグ長くやってるはずです」
「しらないはず」
「ないことは」
「わかってますから」

「それってアメとか必要なんですかね?」

「150アメGので」
「いいですよ」
「今日は」
「それぐらいので」
「がまんします」

「は、はあ。そうですか。よくわかりませんが」


この時、私はまだ【ギフト】というものを本当に
知りませんでした。言うなればプレゼントシステムの
ようなもので、ピグから他ピグへ物を買ってあげる
システムなのだそうです。
この【ギフト】の機能は、私のピグ生涯において
たった1度だけ使用することになりますが、
それはまた違うエピソードとなります。

「ピグ歴長いとよく思われるんですが、私はこう見えて
 まだ2ヶ月なのですよ」
「なので、そのギフトとやらも本当になんのことやら」
「分りかねる次第でしてねぇ」

「もう」
「話になりませんね」
「へたなうそは」
「やめてください」
「わたしに」
「ギフトをくれれば」
「いいんです」

「でも、それって有料なのでしょう?」
「こう見えて、私はビンボーでしてねえ」
「アメはまだしもアメGなんてほとんどもってないですよ?」

「話が通じませんね」
「あなたは」
「日本語が」
「できないのですか?」

「なにぶん、私はフィリピン人でしてね」
「先日帰国したばかりで、日本語がよくわからんのですよ」
「いろいろと教えていただけますかねぇ」

「もう」
「いいかげんにして」
「早くギフト」
「よこしなさいよ」

「どうすればいいのやら分りかねます」
「すいませんねぇ」

「なにその態度」
「なめてるの」

「いえいえ、めっそうもない」

始めは本当によく分かりませんでしたが、
段々と焦れてくるこの少女が何か可笑しく、
どこまで根競べになるか試してみたくなる衝動に駆られます。
そして、ラムは1時間近く食い下がります。


「というか、何で私なんですかね?
 このヒゲ海賊から物もらいたいんですか?」

「あなたは」
「お金持ってそう」
「だからです」


その論理がよくわかりません。
そんな押し問答なのかもよくわからないやり取りを
していると、初期の船員でありピグ内での盟友
エースがやってきます。

「おっす」

「おすおす、よくきた、まあ座れ」

「おう」

「あのー」
「ギフトまだですか」
「くれるまで」
「ここ」
「動きませんから」

「なあ、エース。ギフトって知ってっか?」

「知ってる」

「おまえはギフト欲しいか?」

「私ですか」
「服がほしいです」

「いや、君ではなくてだね」

「いらない」

「そうか、エースは無欲だな。やはりおまえは英雄だな」

「そうかな」

「損得を無視して人々のためにすることは英雄の行いだよ」
「エースは損得を考えず、ピアさんのためにこの部屋に来た」
「それはすでに英雄の行いだよ。エースは英雄さ」

「俺、英雄か」

「ああ、そうだとも。エースは英雄だ」

小学5年生の物乞い少女を置き去りにして、小学4年生のエース氏と
英雄を論じ合う設定上小学4年生の私。
このまま四海の名だたる勇者を上げて行き、果てには
英雄と呼べるのは「余と君だ」と三国志演義の一場面を展開しそうな
勢いでしたが、曹操と劉備の間に割ってはいる雷鳴が一筋。

「あのー」
「エースさん」
「この人」
「ギフト」
「くれないんですー」
「最低じゃ」
「ないですかー?」

「????」

英雄エースも目が丸くなるほどの雷鳴が、
そこに落ちた。
なんとかエースを乞食連盟に加入させようと
説得を続けるラム女史でありましたが、
そこへ更なる来訪者が。
謎の組織【相棒】の副長"もえ"であった。

「よっ」
「ピア」
「今日も」
「ここにいるんだ」

「おすおす、よくきたもえ。まあ座れ」

「うん」

「あのー」
「もえさん」
「この人」
「ギフトくれないんですー」
「なんとかしません?」

「え」
「どゆこと」

「もえさ、ピグ長いじゃないピアさんより」

「うん」

「ピグってギフトあげなくちゃいけない決まりとかってあるの?」

「え」
「うーん」
「ないと思う」
「けど」
「なんで?」

「と言ってますが?ラムさん」

「もうっ」
「いいですっ」
「ギフト」
「くれる気ないのは」
「わかりました」
「もう他行きます」

「飲食店の店の裏のゴミ袋置き場とかオススメですよ」

「は?」
「もういいっ」

恐るべき少女は去っていきました。
この後10日間ぐらい私の部屋に巡回しては
"ギフトくれないおじさん"のレッテルを貼ろうとして
周りから逆に「それは違うよ」と諭され続けます。
しかし彼女は自分の思想を一切変えようとはしませんでした。
その証拠がこれです。

既に私の存在はピグ界にはありませんが、
このような形で名残を残した事に、
今となっては感慨深いものを感じます。
彼女は恐るべき粘着力でした。
アバターのお洋服1つに10時間近く見ず知らずの
男を粘着する女という絵面はなかなか無いものです。
我ながら貴重な体験かと思います。


この時期の所持アメ 1050
by souka_t | 2011-12-29 19:14 | 長期レポ | Comments(2)
Commented by 911 at 2011-12-29 22:12 x
げにおそろしきピグ界。
近づかないようにいたします。
Commented by souka_t at 2011-12-30 16:09
ホントにおちょろしいです><
グリーでモバゲーやったほうがいいです
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