第125回芥川賞受賞作品。
2000年の作品なだけあり、インターネットが
作中の小道具として使われるところに時代を感じる。
お話的には仏門にまつわる事が主体で、
成仏などの死観や霊観を取り扱ってはいるが、
全体的に澱んだものは無く、意外と日常的。
何と言ってもお坊さん主観が斬新に書かれていて、
形式的に徐霊などをこなすことへの葛藤は
読んでいて面白味を感じた。ああ坊主も人の子なんだな、と。
霊的なものを理知的に解釈する一節も面白く、
仏教も意外と科学的に解釈できて、その語り口が
坊主らしからぬ柔軟さに満ちているように見えた。
それがリアル僧侶である作者の説なのか、
その筋では通説なのかは分らないが、非常に興味を引く。
この作品が宗教臭くならなかった一因とも言えるだろう。
話の大筋も比較的良かった。
後半に嫁さんの不思議な言動に繋がっていく感じは、
なかなか良い構成だったと思う。
全体的にそつのない作品だったが、
若干奇を衒った職業系に芥川賞は甘過ぎないかという
疑問は残る。 いや、でも、面白かったけどね。