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瀧澤美恵子【ネコババのいる町で】
第102回芥川賞受賞作品。


淡々と語られていく中、所々で見せられる
女の身勝手さに嫌悪感を懐かざるを得ない。

主人公恵里子はもの凄い境遇を持っている。
よくまああれだけ歪んだ女中に育てられて
最終的に自らの家庭を持てたものだと、
変にご都合主義を疑ってしまうのだが、
それだけお隣さんのネコババの家で過ごした時間が
彼女に良い影響を与えたんだなと思う。

タイトルがネコババを象徴的なものにしているが、
本編中は驚くほどネコババの重要な描写や台詞は無い。
むしろネコババの夫の方が印象的ですらある。
しかし、作中で1ヶ所だけ、このネコババの家で過ごした
ことの重大さを表す一節がある。
それは、恵里子が叔母と言い争う場面で、
恵里子は 「人間って結婚しないとマズいの?」
となかなか結婚できない叔母に対して言い放つ。
叔母は経済的な理由を"豊かさ"としてその疑問に答えるが、
ネコババ夫妻の家で過ごした安心できる時間こそが"豊かさ"
であると恵里子は答える。まだ中学生の小娘が、だ。
この場面は非常に印象的で、これがラストの大団円に
大きく繋がったと思う。

全体的に読みやすくヤマもある良い内容ではあるが、
個人的にはあまり好きではない。
しかし、表層生活と同年代の芥川賞というのはやや納得するところがある。
by souka_t | 2011-07-22 19:29 | 文学 | Comments(0)
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