第102回芥川賞受賞作品。
サブリミナル効果とか懐かしいネタを
扱っているところに時代を感じた。
"計算機"というあだ名を持つ
ちょっとマッドサイエンティストっぽい
人物を中心に語られるのが本編なのだけど、
導入部分がSF的で引き込みはなかなかな反面、
計算機が女学生に翻弄されはじめてからの
失速っぷりは悲壮感を伴う。
個人的にはその流れはイマイチだったが、
"計算機"が崩れ行く心情はよく分かる。
よく分からないものに振り回されるというのは
確かに興味を殺ぐ一因足りえる。
論理が破綻している者に掻き回されるというのは
非常にストレスが溜まるものだし、相手は往々にして
話を理解せず感情に任せて口を開くものだ。
特に女性はと書くと男女差別だろうか、でもそう書きたい。
文学作品の例に漏れずラストのシーンに
様々な解釈ができるのだが、計算機は死にたかったんだろうなと
個人的には思う。いや、死ぬという結果を実験で
導き出したかったんだろうなと。
思ったより恐怖は無くて、思ったより一瞬で、
思ったよりもなにもえられず生き残ってしまった。
それがあのラストなのかなと。
久々にあーわかるわかる的な内容ではあったが、
作品的にそこまで面白くないのが残念なところ。
まあ芥川賞に1つあってもいいだろ的な類。