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村田喜代子【鍋の中】
第97回芥川賞受賞作品。

田舎と家族と夏休みと昔話、
ジブリ絵で脳内再生余裕でした。

充分最後まで読ませる内容だったのだけれど、
引っ張るだけ引っ張ってきたネタを、
最後の最後に藪の中へと投げつけてしまったのは
個人的にはいただけない。
途中まで散りばめたエピソード群は秀逸で、最終的に
それらをどうやって束ねていくのか、本当にワクワクしながら
読み進めたのだけど、いくらなんでもそりゃねえだろ的な最後。
文体も柔らかいし話の構成も途中まで意味深に感じるほど凝ってるのに、
何故そうなった。

記憶の曖昧さこそがテーマの核に添えたものとするなら、
これほど恐ろしい話も無いかもしれない。
老いることで身体のあちこちにガタがくることより、
記憶が曖昧になり思い出が失われていくことの方が
よっぽど怖い。この話に於いては更に真相が失われるという
二次災害がラストの展開だけど。やっぱり記憶の曖昧さを
指摘されて気づく当の本人が一番怖い。
おばあちゃんがアルバムを引っ張り出してきて
必死に思い起こそうとする場面はかなりくるものがあったね。

最近物忘れが多いだけに身震いする話でしたわ。
後味の悪さは残るけどそれなりに面白かった。
by souka_t | 2011-07-01 06:06 | 文学 | Comments(0)
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