お茶売りの行商人の娘さんがたまたま入った小舎で
暖を取り、その家主の男とイイ仲になる話。
情緒溢れる都内下町の描写に、
夫がシベリアに行って帰ってこない女と
出兵から帰ってきたら妻を寝取られてた男
という時代ならではの出会いが書かれていた。
非常に戦争の爪痕を感じさせる話だが、
急な結末が醸しだす喪失感もなかなかのものだ。
前に読んだ晩菊ほどではないものの、
この下町でも三十過ぎというやや高齢設定の
女性が書かれている。
五十過ぎの晩菊の主人公はしたたかで駆け引きに長けた
女性であったのに対し、こちらは年相応にグレードダウンした
普通の女性といった感じだった。
この作者、なかなかにしてその書き分けが上手く、
さすがは女流作家と思わせる。