カテゴリ:文学( 86 )
深海のイール(上) 感想

500ページ以上の長編はひっさしぶり。
毎日ちょっとづつ読んだり、気になるところ読み返したりで、ようやく上巻読了。


海洋系のノベルってなにげに初だったかも。
洋上プラントとか、ユニットとか、メタンハイドレートの性質とか
いろいろ新鮮な用語や知識が出てきたけど、
本編上でかなり丁寧に解説があるのでとても分かりやすかった。
それゆえにこのページ量になったのかもしれないな!

中盤までパニック映画のノリで、どえらい事が世界中で起こって、
その1つ1つがすっごい意味深で、話がミステリアスな方向に
どんどん盛り上がっていくんだけど、全然その結末になるであろう原因の
予想がつかない。 最序盤に発見される新種のゴカイですら
完全に解明されてない状態で上巻が終わり、その他にも
異常な現象が山盛り課題になってて、ホントにコレ点と点がつながるのか?
ってぐらい、いろんなことが上巻で起きた。
たぶん、中巻以降でその実態が解明されていくんだと思うんだけど、
上巻の風呂敷の広げようが凄かったので、先が楽しみでならない。

登場人物が結構いて、視点がどんどん変わって話が進むので、
そのエピソードで主役の人物が異常の原因に1歩近づくと
すーぐ視点が変わるのがホンッッットいやらしい。
おいおいおい その先を言わせてから変われ!!って具合に、
連続ドラマの上手い引きと同等の歯がゆさがある。
あと、登場人物が多くてその身分も様々なので、たまに
名前と肩書きと今までどのエピソードでなにやった人だったかという
一致がなかなか取れないときがあるため、表紙にある人物一覧に
何度お世話になったか分からない。
微妙に人間関係のドラマも見せてくるんだけど、
もう異常事態の原因が気になって気になって、ドラマが煩わしいほど。
でも、無いとそれはそれで味気無いんだけど。

上巻ですこぶる盛り上がってきたので、
早速明日から中巻に取り掛かる!



読了記念イラスト。

アナワクって外見に関する記述が少なかった気がする。
グレイウルフは登場した瞬間からばりばり外見に関する記述だらけだったのに。
デラウェアがアナワクに「マカ族なの?」って聞いちゃうぐらいだから少し
濃い顔だと思うんだけどどうだろう。
デラウェアはどう読んでもこざかしい小娘って感じで間違いないだろう うむ。
[PR]
by souka_t | 2013-10-22 21:14 | 文学 | Comments(0)
ダブルスター



8月はハインライン月間ということでこの1冊。
ダブルスターを読了。

一介の俳優が、ひょんなことから
超大物政治家の替え玉になる依頼を受け、
火星に連れて行かれ政争劇を展開するお話。


役者が主人公ということで、演技スキルに関する
ハッタリの効かせ具合が序盤から飛ばしてて楽しい。
所々台詞や例えが小粋なのもハインライン独特の
センスがあって好きだ。
個人的に盛り上がりどころは火星の儀礼に参加する場面。
触手に異臭とレトロなエイリアンチックな火星人像はさておき、
その独特な生態、風習や慣わしといった火星人文化が
とても異様で面白い。巣ーネストーと呼ばれる独特な
火星人社会が書かれてるところなどは特にSFを感じた。

火星人の摩訶不思議な世界とはうって変わって、
後半はかなり地味な印象だ。
アメリカの大統領選挙を州単位から星間単位で
展開するので、そのスケールこそは壮大なはずなのだが、
現代を舞台にした選挙ドラマの域を出てない。
極めてヒューマンドラマ的な方向に偏ってしまってたのがちょっと残念。
そして締めくくりはどこか悲壮感があり、人道の説き方がいささかクドイ。
でも良い作品だった。


そういえば、
マクロスフロンティアで鉄道模型を趣味にする
大物ゼントラーディーって、このダブルスターに出てくる
ウィレアム皇帝が元ネタなんですかね?
[PR]
by souka_t | 2013-07-31 09:10 | 文学 | Comments(0)
盤上の夜


伝統的盤上ゲームを題材とした6つのオムニバスストーリー
を収めた一冊。
去年ぐらいに話題になってたので気になってました。
市内の図書館で発見し読了です。

いきなり肢体欠損の棋士とか
おもっ苦しいのがきて驚いちゃったけど、
どの話も良いですね。
個人的には、「人間の王」っていうチェッカーを題材にした
エピソードが好きです。
コンピュータ解析によって死に行くゲームに
最後まで王者だった人のお話で、
全エピソード中いくつか登場する
「ゲームが死ぬ」という表現が一番使われるお話でもあります。
その表現が非常に印象深く、
一切の運の要素が無いゲームの存在的な重さと、
いずれ訪れる最善手解析完了という終幕の儚さを感じました。

このエピソード群の中には、囲碁・チェッカー・将棋ときて
それら完全情報ゲームと対象に麻雀も取り扱っていて、
最後のエピソードでその打ち手同士が交差する所も
良い読みどころでした。

そして、私が以前いろんな書籍を調べて
制作したチャトランガのエピソードもありました。
これだけ古代インドの大河ドラマになって、
かなり毛色が違ったエピソードになるのですが、
これこそが本来のエピソード0だということは
チャトランガフリークならすぐに読み取れます。
全ての交代手番系の盤上ゲームの始祖、かもしれない
チャトランガこそが、全ての盤上ゲームのドラマの
始祖であり根源でもあると。
まさにそれが誕生する瞬間と、それが個人の中で孤独に
体系化していく様が書かれているわけですね。
夢の中に登場する「四方扉」とか、チャトランガの4人用の方の
原型もほのかに匂わすあたりがたまりません。

なかなか乙な一冊でした。
[PR]
by souka_t | 2013-06-25 23:39 | 文学 | Comments(0)
ロボットと帝国(下)


アシモフ・ロボットシリーズのラスト。
上巻から続き、事件が本格的に始まるのがこの下巻。


上巻で不可解だった相手の行動や思惑が、
この下巻の冒頭からその相手の視点となり、
次々と回答される展開。俗に言うザッピングな話の造りになってる。

スペーサー側の企みと、ダニール&ジスカルドの推測が
交互に進む話はそれだけで面白く、
中盤最大の盛り上がりどころでは、いよいよダニールが
新たな原則を編み出すという熱い展開。
鋼鉄都市からはじまり、このロボットと帝国までに至る
まさに集大成な発芽はなんとも感慨深い。

これまた今回もラストで驚愕の結末があって、
それが銀河帝国シリーズに見事に繋がるところなどは
お見事としか言いようがない。

しかし、惜しむらくはスペーサー側の計画かな。
執筆順からしてファウンデーションの彼方の時点で
伏線が張られてて見事ではあるのだけれど、
発案者の計画では150年かけて成果を収めるって
気が長すぎだろう。スペーサーが長寿であること抜きにしても
計画の協力者が逸る気持ちも分からないでもない。
あと、計画について語られる場面
「地球がユニークであるのは、第三のー」
といやらしく寸止めで内容の断片を示すところ。
あれは地球のユニークな衛星である月を利用する
なにかしらの計画かと思って大仕掛けを期待してしまった。
星継ぐの読みすぎだなー。
実際の計画も小型核反応増強装置というSFがジェットを
駆使するとはいえ、ちょっと地味すぎたのが残念。
やりとりの内容は十分面白かったからよかったけど・・・。


これでようやく長編ロボットシリーズコンプ。
短編のミラー・イメージはどうしようか考え中。

いやはや、素晴らしい長編だった。
[PR]
by souka_t | 2013-05-31 00:19 | 文学 | Comments(0)
ロボットと帝国(上)


アシモフ・ロボットシリーズ最終章の前編。
今回は、今まで主人公だったイライジャ・ベイリが没後の時代まで進み、
ダニールとジスカルドはそのまま登場。二作目のはだかの太陽から
登場したグレディアを主役に添え、再びソラリアの地へと踏入るお話。


いきなり前作までの主人公が死んだ後の話になっているから、
なんかもう後日談っぽい雰囲気になってる。
ところどころ過去の回想が入るところなんかもまさしく
そんな感じで、ダニールとベイリの関係をより深く示されているあたりは、
シリーズ通して読んできた者としては鉄板の内容でした。
ソラリアからオーロラに亡命してからどんどん変わり行くグレディアも、
ここにきてようやく"我意を得たり"的な展開があって、
クライマックスの演説シーンなども、長寿の生命体の問題点など
上手く表現した形となり、その話の巧みさには唸らされました。

前作ラストで強烈な印象を与えたジスカルドが、
本作ではどのような活躍を見せるかという注目どころがありましたが、
これまた、最初からたっぷり見せられ、大変満足。
ダニールとジスカルドの会話内容だけでも
シリーズ順に読んできた者としてはワクワクもので、
更にイライジャの思い出やその影響をところどころ匂わせるあたり、
本当に素晴らしい。
上巻ラストではジスカルドが心理歴史学のヒントを
大観衆から得るところなんかもう、ファウンデーションシリーズファンにも
たまらんです。どうなるんだろう下巻。

そんなわけで、すぐさま下巻も借りてきました。
ロボットシリーズいよいよラストかあ・・・
[PR]
by souka_t | 2013-05-18 16:37 | 文学 | Comments(0)
【文学】夜明けのロボット(下)


上巻に引き続き下巻も読了。

上巻で投げつけられた難問である
"ヒューマンフォームロボットをフリーズアウトさせた犯人"
の容疑者を順を追って取調べしていく話でした。

上巻で心理歴史学の話が出た辺りから最高潮でしたが、
下巻の序盤から中盤はほんとうに野暮ったい。
痴情のもつれを延々とこねくり回される感じは如何ともし難く、
ダルさは否めなかった。その先に至った回答も
「え・・・それでいいのかよこの話」
と、思ったほど唖然とした決着が付きましたが、
そこはさすがアシモフ。SFミステリの第一人者。
前作"はだかの太陽"と同等の切れ味があるエピローグが
用意されていました。
よくよく"終わりよければ全てよし"とは言いますが、
それを地で行ってますな。
ラストで再び意外な登場人物からファウンデーションシリーズとの
繋がりを示唆される場面で興奮しました。


シリーズ交点という意味では間違いなく傑作でしたが、
単体で見ると、若干はだかの太陽の構成の焼き直し感があります。
というか、一旦幕を引いてからのネタばらしという構成は
「第二ファウンデーション」の頃からお得意な感じですな。


ここまで読んだからには、次のロボットと帝国を読むしかないな。
問題は短編のミラーイメージをどこで回収するかだ。
コンプリートロボットが図書館にないのよね・・・
[PR]
by souka_t | 2013-04-19 19:10 | 文学 | Comments(0)
【文学】夜明けのロボット(上)


アシモフ・ロボットシリーズ3作目の上巻。
地球人刑事・イライジャ&パートナーロボット・Rダニール
が活躍するSFミステリ三作目。

興奮した。
明確に、ファウンデーションシリーズとの繋がりが示唆される場面は、
逆から読んでる自分でも鳥肌物でした。
当時、刊行順に読んでた人は、もっともっと興奮したでしょうねえ。
うらやましいです。刊行順に読んで、この興奮を味わいたかった・・・。
これから読む人はファウンデーションシリーズもひっくるめて
刊行順に読むことをオススメします。


今回は、第一作目「鋼鉄都市」に登場した、ファストルフ博士が再登場し、
もっともおいしい場面を演出します。
博士の語りだけで、この上巻を読んで満足ってぐらい良いです。
事件話の方は、前作を踏まえて、より一層ロボット三原則の、
是非を問う内容となり、更に、哲学的な語りが多めになってます。

それにしても、"異質な価値観"を書くのが上手過ぎる。
前作のソラリア世界も、いずれ人類はそうなるんじゃないか
ってぐらいの妙なリアリティがありましたが、今回も
それと同等の薄気味悪いほどのリアリティというか、
すでにそうありつつあるんじゃないか、というような感じさえ
するほどで、アシモフ氏のこういった示唆はいろいろと考えさせられます。

読みながら、ロボット三原則を活かしたロボットゲームって
作れないかな~と、考えているのですが、なかなかまとまんないです。
ロボットと言ったら戦闘ロボなアニメっ子でしたが、最近はもっぱら、
アシモフスタイルのロボットを第一に考えてしまいます。
このテーマは、人狼系の吊りゲームに消化できそうな気がします。
[PR]
by souka_t | 2013-04-04 20:46 | 文学 | Comments(0)
【文学】はだかの太陽


アイザックアシモフ・ロボットシリーズ2冊目。
前作・鋼鉄都市の続編で、主人公ベイリとダニールが続投。

今回も見事な結末で、SF養分もミステリ養分も鋼鉄都市より濃い目に
なっていて、大満足な一冊だった。

特にソラリア世界の設定は、形が違えども現代のネット社会の
問題を痛烈に風刺された感があり、ネットのネの字も
行き過ぎたお一人様文化もない1957年に、このような先見を
見せ付けるアシモフ氏が凄過ぎる。

逆のファウンデーションシリーズから読んでるものだから、
ダニールがベイリの奇抜な行動からどんな影響を受けて
いくんだろうって部分でも凄い楽しめるんだけど、
今回のラストは特に「ファウンデーションと地球」のラストと
重なるベイリの演説が熱い。地球から宇宙に、いずれそれが
トレヴィスによって銀河系から外宇宙に、というスケールアップ
の語りになると思うと目頭が熱くなる思いだ。
このスケール感こそがSFだよなあ。
ソラリアの末路もどうなるか知ってるだけに、ちょっとした
俯瞰視点で読めて面白かったんだけど、あの世界が
微妙に存続してるところが妙に現実味があって薄ら寒いものがあるね。
もしあったら俺もソラリス民になりてえとか思っちゃうあたり
かなり駄目なんですけど、あのソラリスの地で
最高の媒体が生まれ出ることになるのは意味深だな。
その辺り、アシモフ氏自身もどういった見解を持ってたか非常に気になるところ。

あと、未遂に終わった陽電子頭脳兵器が印象深すぎる。
[PR]
by souka_t | 2013-03-21 22:01 | 文学 | Comments(0)
【文学】鋼鉄都市


アシモフの鋼鉄都市読了。
ちょうど文庫サイズは借りられていたので、
世界SF全集14より回収。

見事なまでにSF設定を生かしたミステリ作品でした。
前回までファウンデーションシリーズを読み進めていたから、
本作の主人公のパートナーであるR・ダニールが出てくる
最序盤から充分に楽しめました。
ダニールがどうなってああなるんだろうとワクワクしながら
読み進めるという俯瞰的な読み方をしたものの、
そこまでの片鱗はまだ無かった感じで、
そのあたりはもうちょっと先でしょうか。

本編は刑事とロボットという組み合わせで話が進むのが
面白いというだけでなく、
未来の市民階級制度がある刑事という凝った設定や、
ロボットパートナーによるロボット設定を生かしたサポートや
内臓ガジェット、そして、ロボットの存在自体が上手く
話に関連しているところが凄い周到。

ファウンデーションシリーズでもそうだったけど、
とにかくラストの怒涛のスピーチによる伏線大回収が
凄いの何のって、ただでさえこういったミステリを
書き上げる技量があるのに、SF的な社会学や
未来的価値観を生み出すとか、本当にアシモフ先生はチート過ぎる。

今回も良書でした。
[PR]
by souka_t | 2013-01-27 14:18 | 文学 | Comments(0)
【文学】ファウンデーションと地球 下巻


上巻の盛り上がらなさでは落胆させられたが、
下巻も危うい低空飛行で進行し、あわやここにきて駄作化かと
思われたところ、ようやくラストで体裁を保った感じだった。
シリーズ的にはこの後は時代が戻ってしまうので、
本作が最も未来の話となるらしく、
そのラストで示唆した一抹の不安がどういったものになるのか、
アシモフ氏の手で書かれることがなくなってしまったのが非常に残念だ。

本作の本編はかなり退屈な右往左往を見せられるのだが、
どうもこのあたりはアシモフ氏の別作・ロボットシリーズとの融合がメインらしく、
深く楽しむにはそちらも読んでおく必要があったようだ。
全容把握はかなり面倒そうなので、いつもならここで区切りをつけて
アシモフ作品からは離れているところだけど、
ラストでようやくゴールに到着してからの展開は印象深いものであったため、
この後にロボットシリーズを読むことを決意した。


結局、最高に楽しかったのは初期三部作で、
第二ファウンデーションとの謀戦が最大の盛り上がりどころ
だったことは否めない。
続編の「ファウンデーションの彼方へ」では、
初期作の骨太設定を支えたセルダンプランと、
その守護者であり、ある意味での敵対者だった第二ファウンデーションの
陳腐化が一気に進み、唐突に現れたガラクシアの圧倒的で神秘な存在に
よって、一様の楽しみを確保されたが、本作「ファウンデーションと地球」は
その流れにおいてはほぼ蛇足でしかなかった感もある。
が、しかし
「初期三部作」と「彼方へ」の間に30年の開きがあるというのも、
ここにきて納得が行く気がするもので、
本作主人公のトレヴィスが迫まれる選択が示すとおり、
アシモフ氏の中の良しとする人類の形が揺らいだことを
表したのがガラクシアという存在であり、本作ラストで強烈に示唆した
ロボット三原則を脱したロボットという存在だったのだろう。
この先に何が起きたのかは、もはや氏によって書かれることはないし、
余程のことがなければその創造の域に達する作家によって書かれることも
ないだろう。それほどに含みのあるラストだったと言える。
傑作だと思う。


ファウンデーションシリーズを現代のアニメ作品に照らし合わせると
非常に面白いものが見えてくる。
鉄で覆われたトランターは銀河鉄道999の機械人間の惑星のようであり、
第二ファウンデーションの精神感応の描写は
ガンダムのニュータイプのようであり、
ガラクシアの一体感の表現は
どことなくエヴァンゲリオンの人類補完計画のようで、
ソラリアの遺伝子改造は過度ではあるが、
浅いところで星界の紋章のアーヴを髣髴とさせられる。
(個人的に、強烈な力を持つ異形異界の者という意味で、
ミュールにはドラゴンボールの初期ピッコロのようなイメージもある。)

それじゃ、ラストのロボット三原則を脱したロボットの頭脳を
持った超常的な遺伝子改造人間に当てはまるものはあるだろうか。

パッとは思いつかないな。
本作でその雄姿までは書かれなかったが、
どういった存在を想定していたのかは興味が尽きない。
ロボットシリーズも読むっきゃねーな。
というか強烈な伏線残して逝かないでくださいよ><
トレヴィスが一貫してアレに嫌悪感持ってたのって
絶対伏線でしょー
[PR]
by souka_t | 2013-01-15 18:51 | 文学 | Comments(0)