カテゴリ:ノベル( 15 )
初恋温泉 hondana

吉田修一さんの短編集「初恋温泉」です。

温泉宿に訪れる様々な男女を書いた作品で、
どの話も一癖あって面白い。

中でも印象深かったのが、
男女共に不倫同士が温泉旅行をする話と、
バリバリのやり手保険会社員が旅行前日に妻と喧嘩して
独りで温泉に行く話し。

前者は、不倫してる旦那と妻の会話が非常に思わせぶりで
バレてるのかバレてないのか、読んでる方もヒヤヒヤしてくる感じが
良く、不倫相手の女性もこれまた思わせぶりな言動やラストの行動が
ミステリアス。

後者は、旦那が業績を上げてお給料が上がり続けてるところで
妻と大喧嘩してしまうんだけど、これがまた女がゆえのめんどうくささ
が発端でやらかしてしまうところが実に生々しい。
本文を見るにそこまでぞんざいに扱われてるワケでもないみたいだし、
現にプラズマテレビ買おうとかいっしょに旅行行こうとかしてるワケで、
それで、「そんなに稼いでどうしたいの」とか「わたしを見てない」
とか言われたら、そりゃグーパン食らってもしかたないと思う。
これは絶対にがむしゃらにがんばっとる男に言っちゃいけないことだ。
沸騰しやすい旦那なら殺される。そう思えるほどリアルな独り旅動機。

全編にわたり読みやすく分かりやすい表現で書かれていたり、
一編ごとにキャッチーな一節があるのが素晴らしかった。
心の空虚を「ブロックパズルをいくら動かしても1つ空きが出来る」
とか「、男の一人暮らしをレンタルしたアダルトビデオを見ないで
返却しにいくようなもの」とか、飛行場ニ出た時を
「一瞬音がなくなった世界になる」とか、
ああ、わかるわかるって感じが最高。








[PR]
by souka_t | 2016-02-12 21:02 | ノベル | Comments(0)
お父さんのバックドロップ

中島らもさんの短編集です。

少年よりも少年ハートを持ついろんなお父さんを書いた短編集で、
どの話も趣があり良かったです。

自分などの父親は、
商売柄わりと誰にもフレンドリィでありながら、ユーモアがなく、冗談が通じず、
よくわからないことで怒る
といった、外面や形だけの面白味のない、子供からすれば退屈な人だったので、
本書にでてくる奇行じみたことを突然やってしまうようなワクワクする父親
というものに大変憧れを抱いていたものです。
そういった憧れというものはそのままなりたい大人というものに
直結するもので、これら短編集は当時の自分のような子供らが
思い描くような父親像であるとともに、成人男性なら意外と誰しも奥底に
ある変わらないものをよく描いているように思えました。
そう。男性というものはびっくりするほど中身が変わらないものなんです。

登場人物は毎度破天荒ながらどれもイイ話でまとめられてました。
なかなか良書です。

男性はよほどこじらせてない限りは多くの共感を覚えると思いますが、
あえてこういうのは女性が読んでみるといいと思います。 男ってこういうもんすよ














[PR]
by souka_t | 2016-01-28 09:07 | ノベル | Comments(0)
バスティーユの陰謀


朗読3冊目読了。 今回は藤本ひとみ著 バスティーユの陰謀 です。
藤本作品は以前にハプスブルクの宝剣を読みましたが、
こちらも同じく歴史ファンタジーで、しかも、より読み易くライト寄りな内容でした。
舞台となるフランス革命直前あたりの話は、教科書上の記述と
ベルバラぐらいしか予備知識が無かったのですが、読後に登場人物を
調べたら過半数が実在人物で笑いました。
それにしても本文中ではこれでもかと地理感の強さを見せ付けてきます。
ハプスブルクの宝剣の時もそうでしたが、なんとも、現地を見てきてちゃんと調べて
きたんだゾ的なドヤ顔が浮かぶほど。

以下ネタバレ多分に含む



主人公ジョフロアはとどのつまり、ちょい役の蜂起協力者として登場してた
カミーユデムーランの実際の役所を全部もってっちゃった訳ですね。(であってるよね?)
コデルロス・ド・ラクロなんかはほぼほぼ黒幕扱いで、面白いところに配したなあと。
結果として実際に当時の黒幕と言われていたオルレアン公爵の目論見を潰して
やったのだから陰謀に一矢報いてやった形になったといったところでしょうか。
この後主人公はどうなったんだろうって感じのラストはハプスブルクの宝剣でも
同じだったけど、こっちの方が一仕事終えた後のキリのよさがあって良いかな。
結構楽しめました。
[PR]
by souka_t | 2015-04-03 21:05 | ノベル | Comments(0)
【ノベル】OP-TICKET-GAME


久々のラノベ、2015年最初の本はコレ。
土橋真二朗先生のOP-TICKET-GAMEです。

OPチケットとはおっぱいチケットのことで、
手にすれば書かれた名前の女子のおっぱいが揉める!
というとんでもないアイテム。
本編では学校の1クラス全員がこのチケットを争奪するために
てんやわんやの一大ゲームを展開します。
これがまた、オバカなんだけど、シュールオバカとでも言うべきか、
物凄く面白かったです。

作中3度チケット争奪のためのゲームが変わるんですが、
最初のチケットトレード戦は、なんかボードゲームのピットみたいだった。
クラス中の男子が闇取引きをするが如く慎重にトレードしたり情報収集
したりする描写は大真面目にオバカやってて楽し過ぎる。
中高生はこれぐらいとまでは言わないけど、日々オバカな事に情熱を
燃やして欲しいという私の願望を具現化したような内容でもあった。
学生はやっぱりバカやってこそだろう。

土橋先生の文体は相変わらず柔らかすぎず固すぎずで読みやすいけど、
量子の例えはちょっとクドかったかなー。
ゲームは公平にはじまり公平に展開し、富が集中すると1プレーヤーに
非難が集中する部分を社会風刺的に書ききったところはお見事。
話題の課金ゲームに関しても「金はその人間の能力の一部、
金が悪だとするのは貧乏人の僻みでしかない」
と言い切ったところは爽快だった。こういった感じに所々風刺を利かせてる
のが好きだなあ。全編大変楽しめたと思う。
扉1~2やツァラと比べるとゲーム自体の完成度は低すぎるけど
葛藤や台詞の面白さで完全カバーしてた感じかな今回。
それにしても幼馴染キャラにややキビシーよな先生。
[PR]
by souka_t | 2015-01-09 06:28 | ノベル | Comments(0)
【ノベル】演じられたタイムトラベル


去年の暮れに出た土橋真二郎先生の新作、
演じられたタイムトラベルを読了。
鎌倉図書館でこれをリクエストした人、マヂグッジョブ!

今回も状況が切迫する中の人間関係のこじれが
息苦しく、それが面白い。安定の土橋節でした。

特に舞台仕掛けが上手く、
今までで一番凝った設定だったんじゃないかな。
同人ボードゲームを作ってる身としても非常に興味深い
ギミックを見せてもらった。
システムに元ネタはあるのかな?
バッドエンドをかいくぐっていくくだりは
惨劇ルーパーっぽい感じはしたけど、
それ以上に興味深かった「辻褄を合わせる」って部分は
非電源ゲームに生かせるニオイがしまくりだ。

舞台装置はホント面白かったけど、
たまに挿絵の代わりにある図表とテキストだけでは
状況が掴み辛いのが難点だった。
かと言って、実際やってるのはセットが安っぽい
リアル脱出ゲームのようなことだから、そのまま
映像でやってもそんなに映えなそう。

世の中にはいろんなループモノがあるけど、
これほど変化球というかメタなループモノは
今まで読んだことが無い。オススメしたい。



以下ややネタバレ











人間関係と舞台装置に力を割きすぎたせいか、
あんまりどんでん返しな展開は無かった。
毎回メンバーの中に主催側の人がいるけど、
今回はあえて外してきた感もあるな。
ゲーム自体の魅力で押し切った。
最後に明かされる6人目の死亡者も、
本編でそれを示唆する伏線が欲しかった気もする。
しかし、これほどのものを1冊に収めること自体凄い。
[PR]
by souka_t | 2013-03-07 20:50 | ノベル | Comments(0)
【ラノベ】楽園島からの脱出 後編


前編に続き後編も読了。

殺戮ゲームの館の清涼感と
扉の外の予感を併せ持ったラストだった。

本編では濃厚な愛憎劇や、権力の移り変わりを
書いていて、それはもうせわしく、
思えば二転三転と大いに楽しませてもらいました。

それにしても女の憎悪の書き方が凄い。
それに伴なう男の弱さの書き方が巧い。
文節の所々に何気なく折り込まれた
「女ってのはこういうときこうだ」的な内容は
ついつい「だなー」って一人で読みながら本に
相槌してしまうほどで、そういう部分がなんとも面白く、
その面白さの性質がラノベらしくない。
だからこの方の作品が好きなんだろうな、と
読後妙に納得してしまう。

集団が没落して、また新たな集団が台頭する様も
妙に説得力のあり、初期作の扉の外での集団の書き方より
一層進化したように感じた。

舞台のゲームや仕掛けも
それほど穴があったようには見えなかった。
本編で再三に渡り書かれた「ルールの範疇」
という言葉どおり、各自がルール内で行動し、
次第に沸騰し抗争を展開するという様は、
MMORPGやソーシャルゲームの縮図のようでもあった。


実際に作中のゲームイベントがあったとして、
自分ならどうしてただろう? と読後に大半の人は考えると思うけど、
自分なら他が脱出を目指してる中ではじめからタイムオーバー覚悟で
リゾート満喫モードに入って、同じような目的の子と
ペア交換してもらった上でコテージかホテルの一室に篭って
ゲーム中にゲーム作ってるね。さすがに紙とペンぐらいあるだろうし。

ナビの女神像無しで脱出とか無理ゲーだよなー、
あれ実質最重要アイテムだと思うね。


と言う訳で超面白かったです。オススメ
[PR]
by souka_t | 2012-10-22 21:07 | ノベル | Comments(0)
【ラノベ】楽園島からの脱出1


殺戮ゲームの館以来久々の土橋作品を読みました。

相変わらずゲームを中核とした舞台設定が上手く、
1つ1つのルールが手探り的に判明していく過程が面白い。
今回は脱出ゲームを題材にしているだけあって、
牧歌的な序盤の探索であったものの、終盤にむけて
重要なルールが明示されるとともにプレーヤー間の
価値観やゲームの質が変貌していく様が見事過ぎた。

扉の外・ツァラトゥストラ・殺戮ゲームと読んできた
自分にとってこの作風がたまらない。
わりかし学園モノって嫌いなのだけど、こういうのは読める。
キャラクター小説のキャラクター部分の個性と
舞台仕掛けのゲーム部分との絡め方が見事と言うか、
群集心理と個人の心理の書き方が上手いと言うか、
とにかくこの作風が大好き。

1巻では舞台装置が一通り判明して、
ゲームの本質が露になったところで終わった。
いや~ 2巻目が早く読みたい。盛り上がり最高潮だ。
早速鎌倉図書館で予約取り寄せした。
借りてる人、早く返して><
[PR]
by souka_t | 2012-10-10 19:35 | ノベル | Comments(0)
【ライトノベル】ぼくらの~alternative~ 感想


これが今年のラノベ読み納めになるかな。
夏から少しづつ読み進めてようやく5巻読破。
その感想です。(以下ネタバレ含む)



最初にアニメを全て見ておいたので共通キャラはすんなり把握でき、
後半はアニメで1つの流れを知っているからこそ映える場面や生きる伏線が
たくさんありました。本当にアニメを先に見ておいて良かった。
アニメにもアニメの良さが多分にあるけど、ノベル版はそれを加味して
更に解釈を広げたり別解を提示してくるので、まるで物語のパズルのような
読み応えでした。
ロボット+中学生+心理的葛藤でよくエヴァを引き合いに出されそうだけど、
どちらかといえばテレビ版を踏まえたエヴァ破の面白さに近いものがある。
1つの大きな話の流れがあって、また違った可能性を提示するというのは、
大抵面白くなるものだけど、これほど面白くなったモノを自分は知らない。

最初に心中で絶賛したのはキリエ編。
アニメ版ではロボ戦で異常な強さを見せつけ未契約者を暴いて死んでいくのだけど、
ノベル版ではその前の戦いにも絶妙に干渉して勝利の一因を作ったりする
陰の立役者としてより一層魅力的に書かれていました。
更に彼の最後のシーン、あえて自らの手によって敵のパイロットに
止めを刺すところは非常に考えさせられるものがあります。
アニメ版の彼の踏ん切りがつかない不戦勝から家庭事情の変化で
戦う意思が固まっていくまでの話も嫌いじゃないです。

次に後半の戦い全てがクライマックス的。
アウェー戦でロボの前に並び立つ敵の地球人達を踏み潰し阿鼻叫喚の悲鳴を聞きながら戦う
ところなど余りにバイオレンス。しかし、それが敵の地球人側の結束力と
主人公側の地球の結束の弱さの対比になっていて、それ以降結束が雪崩式に崩れ、
終いには守るべき地球すら人の住めないものにしてしまうという凄まじい展開。
4巻終了から5巻半ばまでの救いようの無い展開は、もう、引き込まれるように
ページをめくり続けました。悔しいほど面白い。やばいぐらい衝撃的。

そこからのあのエピローグ。
無人機の禁止という世界設定を逆手に取ったあの場面はもう、
感動にして燃えるシチュエーション。その幕切れも美しい。
絶望的な展開から一気にここまで持ってきたのは素晴らしいです。

ややノベルが後発だったからか、他の世界からの連鎖的な要素も濃く感じました。
個人的にはアニメのラストでジアースを破棄するのは、メディアの枠を超えて
その1つの小さな連鎖を全て断ち切った瞬間だと思ってます。
アニメを見てノベルが映え、ノベルを読んで振り返るとアニメも映える、
なんとも素晴らしい作品です。

ぼくらの~alternative~イチオシです。
[PR]
by souka_t | 2011-10-14 01:57 | ノベル | Comments(5)
”文学少女”と飢え渇く幽霊 感想


前巻の『人間失格』を下地とした物語に引き続き、
今回はエミリー・ブロンテの『嵐が丘』に擬えたものになっていました。
残念ながら自分は『嵐が丘』を読んだことが無かったのですが、
それでも二転三転する展開は充分楽しめるもので、
前巻からの期待通りなかなか読ませる一冊でした。

前巻に比べて、文学少女・遠子先輩のコミカルな面がより一層引き立ち、
ライトノベル然としたキャラの立ち様でしたが、
今回も最後はキメめるところはキメたといった感じで、
素晴らしい文学少女っぷりでした。

前巻同様ミステリー要素があり、
暗号や『嵐が丘』をベースとした濃厚な人間関係の謎かけなどは
前巻より仕掛けが凝っていた印象があります。
自分が『嵐が丘』を知らないせいか、ちょっと濃厚過ぎて
読んでて疲れたほどでした。
だいたい中盤ぐらいでオチは見えてきましたが、
後日談で語られる意外な人物の意外な関わりは最後まで全然読めませんでした。

全体的に先が気になる話で楽しめたものの、
前巻の『人間失格』の本文をベースにした物語と比べると
若干凝り過ぎな感がありました。
結末も解決の爽快感より、走リ続けてようやく息をつく安堵のような
重苦しさからの解放感が強かったです。
[PR]
by souka_t | 2011-09-29 22:28 | ノベル | Comments(0)
【ライトノベル】"文学少女"と死にたがり道化


最近のラノベはどれほどのものか調べるために読んでみた。
というのは嘘で。
花澤香菜ちゃんが劇場版で熱演したと聞いて読んでみました。


とにかく太宰治を読みたくなる話だった。これに尽きる。
全編に渡って人間失格を絡めたミステリ調のお話なのだが、
その端々で文学少女・遠子先輩の語る太宰話は太宰愛に満ちている。
とくにラストなどは結末よりもその太宰愛に満ちた先輩の
長台詞の方が衝撃的。

それが故に文学少女というキャラクターの魅力は
読後寸前に充分伝わる内容なのだが、この異質な
妖怪が序盤から自然と物語上に存在するおかげで、
全編に渡って大仕掛けであるはずの太宰を絡めた謎かけが
"妖怪もいることだしもう幽霊の仕業でいいだろ"的な
感じで読んでしまったのが勿体無い。

それでも充分に面白かった。
学園モノ・部活モノ・トンデモ先輩モノと
要素を拾ってみればかなり王道なライトノベルだが、
なかなかにして読ませるものがある。

ちなみに学園モノ・部活モノ・トンデモ先輩となると
自分の中では 究極超人あ~る が元祖だが、あれは漫画だったな。
[PR]
by SOUKA_T | 2010-12-10 04:48 | ノベル | Comments(0)