奥義伝承デザイナーズノート1


「人生で2度目の趣味に走りきった作品」
と言えるかな。

1度目はこの硝煙の四重奏っていうPCゲームで、
2007年に発売されたもの。
まだまだ剣と魔法全盛のSRPG界隈で、
銃弾と擲弾が飛び交い砂埃が舞うような世界観を唐突に打ち立てた時の
してやったり感は我ながら面白いことやったなと、当時自分で満足してました。
大元のネタは、自分が戦争映画で最も好きな「GROLY」という作品で、
舞台の配置やところどころの台詞にオマージュがあります。
そのGROLYへの想いは、実は中学生の頃からありまして、
「いつかこういうの作りたい、あの壮絶で破滅的なラストのもう少し先まで作りたい」
という願望から、完成版のトゥルーエンドが生まれました。
それで10年以上積み上げた想いを遂げ、この作品から
毎作品ラストに仕掛けを用意し、ショーナンサーガがはじまりました。

さて、奥義伝承のデザイナーズノートであるはずの話がだいぶ脱線しましたが、
ここで驚きの繋がりを告げることになります。

実は奥義伝承も、数年来憧れ続けた作品のオマージュを作るべく
PCゲーム作品として制作がスタートしたのです。
その名を「後漢剣侠列伝」。
実は第一章・第一幕まで完成したバージョンを今も配布中で、
さまざまな都合が重なり制作は数年頓挫している始末です。

当初、この後漢剣侠はショーナンサーガと驚くべき融合を果たす
いくつかの仕掛け用意してシナリオプロットを上げました。
機会があればそれも公開したいと何度か思いましたが、
我ながらこのプロットは珠玉であり、シリーズ通してプレイしてくれている
数少ない方々の"驚き"のためにとっておこうかと思う次第で、
いずれこのPC版の方の制作も再開したいと思っています。

その数年止まっていた「後漢剣侠」を、ちょっとだけ先行して
紹介する作品がこの「奥義伝承」となります。

そもそも、後漢剣侠をはじめたきっかけは、
中国の武侠小説、強いては金庸原作の武侠作品との出会いです。
大陸作品となりますと、皆さんよくご存知なのは
ジャッキーチェンやキョンシー、古典では三国志、水滸伝、紅楼夢
あたりでしょうか。大陸ではこれらと同等かそれ以上に知名度があり、
教科書にも使われるような作品があるのです。それが金庸小説。
"西のトールキン、東の金庸"と並び称され、彼の作品はファンタジーの原点
である指輪物語と同格の位置づけで語られることもしばしばです。
更に言えば、そのような文豪がまだ存命です。(2013年5月現在)

金庸老師の射鳥3部作と天龍八部、そして笑傲江湖と
主に映像作品を通して触れ、いずれこういうものを
自分も作ってみたいと思ったのがはじまりでした。

武侠作品の特徴や定義というものはいくつかあって、
武術を以って正義を成すことと男女の愛
の2つはどの作家にも共通して書かれるものです。
その中で金庸小説の最大の特徴は「歴史背景」や
当時の「逸話」を上手く話に取り込む手法にあります。
つまり、歴史好きなほど、その巧みな仕掛けに気づき
金庸作品にハマるのです。
あの銀河英雄伝説で有名な田中芳樹先生も絶賛していたのが印象深いです。

武侠作品を作るにも、目指す目標が金庸作品となると、
その山はあまりに高い。
最低でも中文解読が可能でむこうの資料を読み漁り
逸話関係をまとめあげるぐらいできなくてはあれほどのものはできない。

ではどうするか。

いろいろ思い悩んだ挙句、
ともかくできる範囲であれっぽいことをやろうと割り切り、
あえて史料が曖昧な時代を選択し、制作のスタートを切りました。
舞台は皆さんお馴染みの三国志の時代である「後漢」。
ちょうど儒が弱まり、道教が形造られて行き、仏教の布教も
根を下ろし始めた頃という、見方によってはかなり美味しい時期でもあります。

武侠といえば強設定の少林寺僧がお馴染みですが、
この時代に少林寺はありません。
しかし、達磨大師の大きな布教以前のシルカセンによる
布教があった時期であり、その伝承にあやかり少林拳の源流である
仏教拳法的なものを描くことが出来、更に、弱まりつつあっても
まだまだ幅を利かす儒者を孔家軽功拳とでっちあげ、
道教はお馴染みの道士。仏・儒・道の三属性という意味でも
裏社会では三国志が形成される・・・ という青写真を書いていました。
奥義伝承に登場する開祖キャラ「天幻道人」はまさに
その道属性の頂点に座すキャラとして作られたものです。
奥義伝承ではその天幻道人ともう1人の開祖「江南龍皇」が
主役のように扱われますが、実は物語の主役は
とある3人の弟子キャラなのです。





主人公の1人で更にセンター的な存在 「王堅」。
カードグラフィックのモデルは神鳥侠侶の「楊過」。

このように、カードグラフィックは武侠ドラマの映像から
いくつもネタを拝借しています。もしかすると
お気づきの方がいたかもしれませんね。

王堅自体は、あらゆる武具を使いこなす器用さの才能を持つキャラで、
物語前半では内功の才能は開花せず、そのリリョクを以って
鉄をも砕く豪腕の一振り「進軌鉄解」という技を編み出す予定となってました。
ちようどそのあたりをフレーバーテキストに落とし込み、示唆できたかと思います。
せっかくの場なのでもう少し書いてしまうと、
彼の宝剣を探す旅は黄巾賊として活動してた子供の頃から始まり、
一度挫折して酒場の店員として数年を過ごしながら多くの江湖の名手とすれ違い、
次第にトウタクの横暴という時代が彼を動かし、全ての髪が白に染まり上がるまで
宝剣を探す旅は続きます。





2人目は「高欄」。
モデルはたぶん崋山派剣法の弟子たちのポーズ。
武侠ドラマではお馴染みの決めポーズの1つですね。
「おっ」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

さて、高欄は復讐の鬼です。武侠作品でお馴染みの仇討ちシナリオが
彼に課せられた役割であり、もっとも私が好む展開を彼のためにいろいろと用意
していました。 彼は強大な仇である「覇王槍の使い手」に挑むために
手段を選ばず己の力を強めることに貪欲となります。
王堅と行動を共にする時も常に己の鍛錬と仇の追跡が念頭にあります。
プロットを多少明かせば、彼は袁紹に仕官する前の文醜に挑み、
曹操の大軍で大立ち回る趙雲にも挑み、魏延とも戦いを演じます。
そして、その都度彼を影から見守る老師の存在があるのです。




最後は「延讀」。
モデルはない。強いて言えば横山光輝ベースの文官いでたち。

彼は序盤から後半までほぼ無力です。
王堅らと共に黄巾賊としての少年期を送りますが、次第に
いずれ仕官するために学を積み知識を蓄えていきます。
ゆくゆくは儒家の門に入り、儒家の大物達に鍛えられた後、
ある強大な敵から劉協を守るため曹操の娘・曹節らと共闘するプロット
が用意されています。



長くなったので、ゲームデザインの話は次回。
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by souka_t | 2013-05-24 21:17 | 同人ゲーム制作 | Comments(0)
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