第二次 からか麺・超特辛戦役

前回の戦役についてはこちらを参照。

江ノ島は快晴。
青空はどこまでも広がり、
これから起こる戦いとは正反対の
清涼感と、一瞬眩暈がするほどの陽射しを受ける。

本当ならゲームマーケット春を終えた後すぐに
挑む予定だったが、何か劇的な刻限にその戦いに赴きたかった。
そう言い続け、ずるずると、今に至った。

嘘だ

逃げていた。
私はこの戦いを、心のどこかで逃げていた。

現に、前戦役の醜態。
滝のような汗とマグマのように疼いた胃腹。
その感覚は昨日まで、いや、今、この瞬間まで
身体に染み付いていた。
想像するだけで喉の焼ける感覚が蘇り、
口内中から唾液が噴出す。
次の瞬間には地べたを這いずり回った自らが醜態が
脳裏に投影される。

それを思い出しては、
まだその時ではない、とし。
この戦いを先送りにしてきた。

だがもう、私は逃げない。
今日は16歳の誕生日、
今こそがその時。

「見よ! 蒼天は我を祝し、
穏やかなる波はこの戦いを望み、
風は無く、あの物と我を隔てるものは何も無い」



一風堂湘南シーサイド店。
戦いの地はここだ。

一階のファミレスが工事中で、
看板の破片が散らばる横を素通りし、
見渡しの良い二階へと向かった。
カラオケ前のテラスで海と江ノ島を一望し気が高揚する。
ひとしきり眺め、覚悟が決まると
一風堂へと歩を進めた。

店に入ると、女中が出迎えて席へと案内される。

「ご注文はお決まりですか?」

「からか麺・超特辛・麺固め」

そそくさと注文を済ますと、
静かな店内に緊迫が走る。
客は少なく、私を含め2組。
少し夏休みシーズンが過ぎただけで
昼時が静まる。観光地とはこんなものだ。

つい視線を泳がせ、
せわしく動く厨房へ、
木製のテーブルを辿り奥に座る客へ、
店内の中央へと向いて女中が控えるレジへ、
ほのかにラーの匂いが鼻を突く。

目・耳・鼻と澄ますうちに
手が寂しくなる。



そこでようやく、
テーブルに備えたもやしナムルに手を掛ける。

これは自ら自作を試みたこともある。
その時は再現性を断念しかつ方向性が変わり、
ゲキカラもやしおつまみとなった。
しかし、意外と評判が良く、酒に合うと好評を博す。
今年の冬も作り置こうと思案している。

さて、このもやしナムルはいかがなものかと評すれば、
その油加減たるや濃厚で、見た目の赤みかかった色からすれば
味は上品にまとまり、辛さはわずか。
歯応えは柔らかく、滑るような油具合が喉を通す。
一口いただいては、もう一口、小皿を空けては
更に一盛り、飽きぬほど、そしてクセになるほど。

つい、我を忘れてナムルとじゃれ合っていると、
ついにあの物が運ばれて来た。



時は来たか。

からか麺・超特カ辛・麺固め。

前戦役と寸分変わらぬその雄姿。
面は油が白く、底は赤くして黒い。
それはまるで幽鬼が地獄の穴へと誘う図。

スプーンで一口。

「痛い」

そう、辛いのではない。
痛い。
これだ、この感覚なのだ。
胃はこれを求めているのに、
喉はこれに恐れをなしている。

飲めど喉は痛く、胃は刺激に満たされる。

早くも眉間に汗が滴る。

あれから、この日を何度想像しただろうか。
家からたった2分。
そう、たった数百歩の場所にそれはあるのに、
なんと遠かったのだろうか。
この日がどれだけ遠かったのだろうか。

何十回、何百回、この瞬間を脳内で仮想再現し、
導き出した攻略法は

置かずひたすらスープを飲み減らす
そして
喉の痛みが過度になる前に水で流す
さらに
麺は飾り、気分で食う

大方針を掲げて短期決戦に挑む構えを固め
二口目。

「ごふっ おふっ」

むせた。

二つの星系が原因すら定かでない戦争を百年間続けていたようなむせっぷり。
ウドの酸の雨に満たされたラーメンでもここまで刺激はあるまい。

そして三口目からは気を取り直して
休まずスープを口内へ放り込む。

それは蒸気機関車のように、
石炭をひたすら焼却炉に放り込まれるように

次第に痛みも辛さも口内で慣れ親しみ、
喉のダメージだけが蓄積されていく。
一定量に高まっては右手でお冷を口に流し込み、
左手ではすかさずスープ運びを再開する。

私は無機質なマシーンとなった。

放り 痛み 流し 放り 痛み 流し 放り 痛み 流し 
放り 痛み 流し 放り 痛み 流し 放り 痛み 流し 
放り 痛み 流し 放り 痛み 流し 放り 痛み 流し 

みるみるうちにからか麺を平らげていく。
前回より数倍早いスピード。




そしてついに、完食。

二度目の戦いは予想以上に優位な展開に終わった。
前回は完食後のレジで腹を抱えて半分呂律が回らなかった
醜態を晒していたが、今回は一風堂カードを作成する余裕すらあった。

完食にして完勝だ。
からか麺は完全に制した。

この後、一時間後に胃が熱くなったが、
それも前回のようにのた打ち回るほどではなかった。
一年間に渡る脅威とはなんだったのか。

次なるゲキカラフードを私は求める!!
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by SOUKA_T | 2012-09-11 21:10 | 日々よしなし事系 | Comments(0)
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