新説チャトランガ 第五回
前回の小人の戦争を検証。

まずチャトランガであることを
駒の種類から検証してみよう。
作中における兵種に関する記述は以下の部分。

「天馬斜めに飛び三つを越え
 上将斜めに飛び四方を横行す
 戦車突入して退くことなく
 六軍の順序は乱れることなかれ」


天馬は3マス先へ飛び越える。
これは明らかに「馬の駒」を表していて、
チェスのナイト、シャンチーの馬、
将棋の桂馬も同じ動きです。

上将、そのまま解釈すれば、斜め四方向に移動範囲を持つ
駒ということで、チャトランガにおける「象」に当てはまる。
しかし、ネーミングからすると、どうも二人用チャトランガ
に登場する「将」と合致するようです。
斜めにだけ移動する駒というのは、将棋の角やシャンチーの相·象、
またはシャトランジのフィル(象)にも見ます。

戦車は縦横に絶大な移動範囲を持つ「戦車」そのまま。
抜群の機動力をして敵陣に突進する勇ましい姿を「退くことなく」と
表したのでしょう。これも縦横に走るチェス・シャトランジのルークや
シャンチーの車、将棋の飛車と合致します。

最後の「六軍」とは何を指すのでしょう?
歩・象・車・馬・王 の兵種に置き換えると5にしかならなく、
総数にしても8駒。どうも四人用チャトランガではない様子。
では二人用に当てはめると、
歩・象・車・馬・王 に 将 を加えてちょうど6。
どうやら6とはこれのようです。
他の盤戯では、シャトランジの駱駝を抜いた6種や、
チェスの6種類にも一致する。

更に作中で
更に攻め鼓が鳴ると、それぞれに歩兵が一尺進む。
とあり、これは1歩前進しかできない「歩」を表しています。

王はただ一騎で南へ走り、数百人は南西の隅に逃れ、
の部分からは、王自らも戦っている様子が伺えます。

このように作中で登場してる駒は
馬・将・車・歩・王
となり、二人用チャトランガから象を抜いた構成と一致し、
シャトランジも塔を車に置き換えれて象を抜けばかなり高い精度で一致します。
シャンチーも良い線行ってますが、シャンチーにおける王と将が被り、
駒種も7つと多で、シャトランジほどの一致は無いようです。

さてはて、
ここでミステリーです。
チャトランガ・シャトランジをモデルとしたならば、
「象」はどこに行ってしまったのでしょうか?

ウィキペディア・チャトランガの項によれば、
(将棋の銀将やマールックのコーンと同様の動き)とする説。
とあります。

ここからは自説ですが、
銀将とコーンは斜め四方と前進が移動範囲で、
王の全方向1歩移動のやや劣化版であり、
歩卒の前進のみよりは圧倒的優秀という
歩以上王以下の立場が垣間見れます。
即ちこれが将となり、いつしか象は
車や馬のような特殊性を失い、王に継ぐ将として
用いられるようになったのではないでしょうか。
四人用から二人用チャトランガに至るまで
「象」の存在を扱い兼ね、
将としてしまうか、象を残し将も加えるか
といった、チャトランガ二人用に至るまでの
模索期があり、象が無く将だけがある
バージョン、あるいは、チャトランガともシャトランジとも
また違った中国圏に伝わった盤上遊戯が存在したのかもしれません。

なぜ、象の存在が扱い兼ねられたという結論に至ったか。
それは実際チャトランガで「象」を運用してみると分かります。
斜めに2歩だけ動ける駒は活躍の場が難しく、
容易に死角に入り込まれてしまうため、
どうにも他の駒と比べるとその価値には疑問符が上がるからです。

「小人の戦争」から得た新説チャトランガ完成のための
大きなファクターは「消えた像」と言っても過言ではありません。
象はやはりいぢるべき要素なのです。



次回はついに現行バージョンの
対人プレイ実況をお送りします。
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by souka_t | 2012-07-18 19:00 | 同人ゲーム制作 | Comments(0)
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