新説チャトランガ 第四回


新説チャトランガの改良を進めて行く途上、
ネット上にて1つの文献の存在を耳にしました。

それは中国の6世紀頃、即ち唐の時代の怪奇譚で、
話によれば、チャトランガや中国将棋・シャンチーをモデルとした
盤戯が出てくる話であるとか。

「これは是非とも一度読んでみたい」と思い、
だめもとで鎌倉市図書館のウェブ検索システムで調べてみると、
その話が収録されているという【玄怪録】を載せた
【唐代伝奇集 2巻】を発見しました。
これぞまさに天啓と言わんばかりに、即座に腰越図書館へ取り寄せを申請し、
先週末、手元にもたらされました。

さて、その書を早速開いてみますと、
それらしき小話が確かにありました。
その題名を【小人の戦争】。
要約した内容を記しますと



汝南に住むシンジュンという男は文学に通じ、
次第に武略(戦争における駆け引き)を修めるようになった。

ある日、シンジュンは親戚から古い山荘を譲り受け、
住む事になった。周りの人は古い家はなにかと物騒だと忠告したが、
シンジュンは「天命だ、怖れることは無い」と一蹴した。

一年後、夜中にシンジュンが書斎でくつろいでいると、
陣太鼓の音が聞こえてきた。それを吉兆だと信じこう言った、
「冥界の軍が我を助けに来たか、もしそうなら、私の出世の時期を教え給え」

それから2~3日後の夜。夢に一人の鎧武者が現れ、こう伝えた。
「金象将軍の使いとしてシン殿に伝えに参った。
貴殿の天運は極めて厚い、よろしくば戦端が開かれつつある我国を
お救いいただけまいか。貴殿に軍の旗印をお預けしたい所存」
対してシンジュンは
「将軍には英明な統率力がありましょうに、なのに、私ごとき非才の身に
お声をかけていただけるとは感謝のきわみ。犬や馬のように働く所存です」
そこで夢から覚めた。
すると部屋の四方から陣太鼓が鳴り響き、一陣の風が吹くと、
身の丈5~6寸の数百に及ぶ騎馬武者が現れ、縦横に陣を整える。

眺めていたシンジュンのもとに兵士が書状をもたらす。
「我国は匈奴と境を接し、数十年も戦を続けている。
兵は疲れ果てたが、天にもたらされた強敵とあらば致し方なし。
貴殿のお力をお借りしたいのだが、貴殿は現世の人。聖の御世(皇帝の治世)
に大きな幸福を賜るはずではありますが、今は我が小国にご助力を。
現状、天那国が北山の敵と連合し毎夜合戦に及ぶものの決定打に欠きます。
毎夜お騒がせして申し訳ない」

シンジュンは更に状況を見守った。

真夜中になると部屋の四方に陣太鼓が鳴り響き、
東の壁にあったネズミ穴が城門に変わる。
軍楽が三度鳴り響くと、四つの門から兵卒が繰り出す。
何万もの兵は風や雲の如く両側に分かれ陣を取る。
東の壁は天那軍
西の壁は金象軍
それぞれ戦列を組み、軍師が進み出て言上する。
「天馬斜めに飛び三つを越え
 上将斜めに飛び四方を横行す
 戦車突入して退くことなく
 六軍の順序は乱れることなかれ」

王が「よし」と答えると、攻め鼓がとどろき、
両軍から一匹の馬が斜めに走り出して、
三尺のところで止まった。
更に攻め鼓が鳴ると、それぞれに歩兵が一尺進む。
更に鼓がなれば、戦車が動き出す。

鼓の音は激しくなり、両軍とも兵力を繰り出し激戦となった。
まもなく天那軍は敗退し、戦死者負傷者が床に溢れた。

王はただ一騎で南へ走り、数百人は南西の隅に逃れ、
敵の手を逃れた。
西南の隅には薬の入った臼が置いてある。
王がそこへ逃げ込むと城壁に変わった。

金象軍は意気揚々と死体をかつぎ並べていた。

眺めているシンジュンに兵卒が伝える
「陰陽は交錯し、その気を捕らえた者は栄えます
 疾風の如く戦い勝利を収めましたが、いかがでしたでしょうか?」
シンジュンは答えた
「将軍の英気はみなぎり、天の時に乗っています。
 とても喜ばしいことです」

合戦は数日続き、一進一退。
戦の合間に開かれる金象軍の宴会にシンジュンも
次第に加わり、金銀財宝の褒賞を手にした。

それからシンジュンは家に引き篭もり、
顔がやつれるまでこの小人達の戦争に没頭した。
怪しく思った親戚達は、シンジュンに酒を飲まし、
事の次第を打ち明けさせた。
シンジュンが便所に行っている間に親戚達は
部屋の床を掘り下げると、そこには古い墓があった。
墓には財宝や数百の甲冑と共に将戯盤があった。

それから盤は焼き捨て褒賞で得た金銀財宝も埋めた。
シンジュンは取り付かれたような顔から平常にに戻り、
その後山荘に不思議なことは起こらなくなった。
時に宝応元年。




唐代伝奇集の中でも抜群に面白い一編だったりします。
シンジュンを古のゲーム廃人と見ると、なんとも味わい深い
話ではありませんか。夜な夜な興じるところなんて得に
ネットゲー廃人っぽくないですかね。
いやはや調べ物として読んだのに話としても充分面白かったです。
チャトランガとの関連性は次回迫ってみようかと思います。
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by souka_t | 2012-07-05 18:49 | 同人ゲーム制作 | Comments(2)
Commented by 911 at 2012-07-05 23:47 x
非常に興味深く拝読しました。感謝。
Commented by souka_t at 2012-07-07 09:22
こういう小話が70編も入ってます。
中国の伝奇集はやや難解な言葉がありますが
短くて読み易いので結構オススメ。
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