SFの傑作と名高い"星を継ぐもの"を読了したのでその感想。
正直、後悔した。
こんなもの読むんじゃなかった。
まず、本編はミステリー調に1つの謎を追っていく
形になっているのだが、これが話として全くの破綻が無く
丁寧かつ細かい。過保護なほどに謎の追い方に筋道が立てられて、
それこそなかなか溶けないアイスクリームを舐め回すように、
じっくり、じわじわ、どろりと、味わい深く濃厚なんだ。
その濃厚さっていうのはね、物理学だったり、地質学だったり、
天文学だったり、時には生物学の進化論だったりするんだ。
人類が長く培ってきた知の結晶で科学者達が宇宙の謎に挑む姿は、
感動すら覚える。
そして、仮説に継ぐ仮説で、一枚、また一枚と剥がれて行く謎のベール
を読み進めるのは興奮する。
派手なアクションやマシンの描写は一切無く、
ましてや、物語を彩るはずのキャラクターの造形もべらぼうに浅い。
なのに、ドラマになってるんだ。まぎれも無くサイエンスなドラマだ。
そうか、SFとはこうあって然るべきか!と、納得させられるほどの力強さを
感じずにはいられない。傑作の名に偽りは無かった。
本編クライマックスを飾るダンチェッカーの演説は本当に素晴らしい。
今でこそ人類のおこがましさを鑑みて自虐する作品が多いが、
人類の種としての強さを誇り高く称える、彼のような物言いは私は好きだ。
さて、約20年越しにふしぎの海のナディアの最終回が「星を継ぐもの」
だった訳がよく分かったのだが、劇場版ゼータガンダム3部作の
「星を継ぐもの」は、ちょっと、タイトル付けが浅はかじゃないの?と
思ったね。ナディアの場合は海底2万マイルの皮を被った星を継ぐもの
って言っても良いぐらいマッチしてるのに対して、ゼータは無いわー。
しかしながら今回読んだ"星を継ぐもの"は余りに傑作過ぎた。
なんかまとまったお話でも書こうかな~と思った矢先に
読むものではなかった。こんなものを読まされては、もう何も書けんよ。
見事なまでに生涯で一番面白かったノベルが更新されたよ。
まぢオススメ。