【同人制作】TAIBANデザイナーズノート


試作から2年。
リニューアル新装版もおかげさまで完売した
【TAIBAN】を振り返り、その制作過程や秘話を書き残しておこうと思う。


■制作決定までの経緯
当初、ゲームマーケット初参戦に向けて、5~6作ほど試作を作り、
その中で2つをブラシアップして出展することを決めていた。
有力候補で【包囲戦】(後のウォールヅ)と【考古学戦争】が挙がったが、
後者の考古学戦争はMtGをベースにしたシステムにあまり斬新性が無く、
テーマも渋過ぎるため没となった。
他の候補には、【王と四大臣】【番長】【北伐輸送隊】【眼鏡っ娘コンテスト】
【AFW戦線】(RING of REDの二次創作)と、多彩なラインナップであったものの、
どれもシステムに重大な問題を抱え完成の見通しが立たなかった。
しかも、どれもニッチなテーマである。せっかく量産するのだから、
もう少しカジュアル寄りでカッコイイものを作りたいと考えていた。
その頃はちょうどアニメ・けいおん!が大ブームで、
音楽+女の子+日常系という強固な組み合わせがヲタク界をざわつかせていた。

【女の子】、松本零士を信奉する自分には「女が死ぬ時は男の腕の中」という
哲学を通せばそれでいいと考えているため、かわいく描こう、かわいく魅せよう
という発想は皆無。オジサンにはそういうのは難しい。

【日常系】、オジサンにはあずまんが以降は焼き回しにしか見えないな。

【音楽】、こればかりは私にも思い残しというものがある。
「音楽にはなんらかの手段で関わりたい」と常日頃から思っていた。
音楽との関わりは、小学生の頃にピアノを少し習い、余りの覚えの悪さから
挫折したぐらいである。ソプラノリコーダーも得意ではなかった。
母はお琴、姉は三味線、と音楽家系のはずなのだが、その血は出なかった。
だが、クリィミーマミは大好きだった。
Q:「アイドルとは何か?」
A:「アイドルとは歌にございます」
これが私のアイドルの定義であった。
そして高校時代、忘れもしないマクロス7。
Q:「歌手とは何か?」
A:「歌手とは情熱にございます」
休日の熱気バサラに感化された青春時代を送った。
それから十数年。
空前絶後の動画ブーム。ようつべ・ニコニコ、日々プロアマ問わずの
「歌ってみた」「PV風にしてみた」「絵をつけてみた」。
彼らはいとも簡単に音楽に関わっているではないか。なんとも妬ましかった。
動画で音楽に関わるのは容易だった。
自分で歌い、自分で絵を入れ、自分で編集してうぷする、それだけでいい。
同人ソフトを一人で制作する自分からしてみれば、
やるかやらないかの差でしかなかった。だが、やらなかった。
レトロゲーム手法派の自分にとって「作品に動画を使うのは甘え」だった。
動画を使っては負けだと思っているのだ。オジサン頑固で老害だからね。

けいおん!で再発した音楽への想いと、ちょうど時を重ねる
アナログゲーム制作開始。
ならばいっそ、「音楽がテーマ」のアナログゲームではどうか?
この発想がTAIBANのはじまりだった。


■プロデュース
新たに音楽ゲームを作ろう。という大方針が決定した。
だが、余りにも大きな問題があった。
「自分があまり音楽に詳しくない」
普通なら本末転倒である。
しかし、それには秘策があり、音楽経験者のご意見番を抜擢する用意があった。
それが、【宗氏】である。
彼はアコギとハーモニカでライブハウスを攻めるリアルギタリストである。
ニコニコで弾き語りをするほどのかまってちゃんでもあり、
彼女に隠れて買ったドリームキャストをサクラ対戦だけプレイして
バレる前に売り払ったほどの男でもある。コレは関係ないね。
制作方針としては、
1.【音楽ゲームを作るというおおまかなことだけ伝える】
2.【音楽ゲームに必要な要素をキーワードで20個ぐらい出させる】
3.【キーワードから自分がシステムを練る】
4.【あれやこれやと協議してパッケージングを含めたデザインを練る】
5.【間に合うように量産】
という具合に進める事にした。
ざっくばらんに
「音楽ゲーム作るから、音楽ゲーに絶対に必要なコト10個ぐらい頼むわ」
というようなメッセージを投げつけ、一晩か二晩待つ。
すると、さすがはリアルライブハウス経験者、でるわでるわのキーワード。
うろ覚えでその時のキーワードを羅列すると
「仲間を集める」「名器」「カリスマ」「テクニック」「流行」
「デキ婚」「ドラッグ」「音プロ」「PA」「選択ジャンル」
「最終目標武道館」「引き抜き」「ガールズバンド」「ケンカ別れ」
「バンドやろうぜ(雑誌)」「ドラム個人所有とか無理」「文化祭」
「ファンの子とヤる」「音楽性の違いとかウソ、性格が悪いだけ」
「アイドルグループ」「ダンス」「ラップ」「マイクパフォーマンスの差で勝つ」
・・・etc
彼との共通知識は漫画のBECKしかなかったため、
かろうじて分かりつつも、半ば「何を言い出すんだこいつは」だった。


■システムの構築
予想以上に膨大に出てきた要素を全て鵜呑みにして統合すると、
それは、【バンドマン人生ゲーム】でしかなかった。
無論、それはいろいろと意に反するので、ここで取捨選択がはじまる。
宗氏に「この中から絶対に必要な最重要要素どれよ」と聞くと、
予想外の答えが返ってくる。

「デキ婚にきまってんだろ」

どうやら、辛い過去があるらしい。よくよく考えてみれば
この男はソロギターだ。昔いろいろとあったのだろう。
あまり多くは詮索しなかった。
完成品に別名・懲罰カードと呼ばれる理不尽な【デキ婚カード】が存在するのは、
これに由来する。解釈としては「この逆境で勝った奴が真にカッコイイ奴」である。

さてはて、話は戻って、要素の取捨選択である。
いろいろと協議した結果「仲間を集める」という要素に主限を置く事にした。
それに伴ない、様々なクラスのバンドマンを集めて最終的に点数化して
競うゲームという大まかな輪郭が決定した。
この時、宗氏は麻雀のようなものを想定していたが、ところがどっこい
アンチ麻雀の自分にはその発想は一切無かった。

この頃はまだ、XBOX360の実績厨房だった。
1本のゲームを実績1000コンプまでしゃぶり尽くしてから
次のゲームをしゃぶり尽くす。これを200本近くやり遂げた。
テレビゲームを老後の楽しみに積んでる人が多くいるかもしれないが、
これだけは言える。無駄だ。人の能力は歳と共に劣化する。
今楽しめても、あらゆる機能が弱まった老後に楽しめるとは到底思えない。
やれるものを今全力でやっとけ、あと、飽きは必ずやって来る。
高橋名人の「テレビゲームだけをする大人にはならないでください」
の言葉は思った以上に深い。
それもさておき、この時はあーるさんから借りてた、
【テイルズオブヴェスペリア】にドハマりしていた。
オジサンが思わず赤面しちゃうような中二ストーリーに中二台詞回し、
こういうのをド定番の恋愛漫画を見るように、くすぐったさを我慢して
プレイすることに快感を覚えるなら、君も立派なオジサンだ。
そんなテイルズシリーズの金字塔のヴェスペリアだが、
今回見るべきところは、オマケのミニゲームで遊べる【ポーカー】だ。
ただのポーカーなのだが、上手くパターンテーブルが回っているせいか、
面白いように役が完成する。思わず「ポーカーってこんなに面白かったっけ?」
と目からウロコが落ちるほど。これに着想を得て、
制作中の音楽ゲームはポーカーをベースとした役作りゲームにすることにした。
それに伴ない、「おもしろいように役が完成する」という設計方針も決定する。
TAIBANの基本戦略には「ロックバンドを作りながら他の役の完成の可能性を探る」
というものがあり、ロックバンドがかなり作り易くなっているのはこの方針に
由来する。
そして、役が完成するまで手札をいぢり続ける「手番回しルール」を
採用してみた。これにより何も完成せずお通夜なゲームになることはない。
誰かしら成し遂げて、誰かしらが達成感を得た時点でゲームは終わる。

最初に配る特種カードの効果については、何度も改訂が入った。
特に【PA】は論議が繰り返され、当初は無条件で勝利点+2であったが、
自分からは
「無条件で+2点は余りに効果絶大すぎる」
というゲームバランスの観点での意見に対し、
宗氏からは
「ライブでのPAの差は余りに大きいんだ。2点でも低いぐらいだ」
というリアリティの観点での対立もあった。
同じく【デキ婚】に於いても
「デキ婚してやめていった奴は大勢いるんだ、
 俺はその多くをこの目で見てきた・・・(遠い目)」
という余りに重過ぎる意見に採用せざるを得なかった。
更に【音楽プロデューサー】も
「音プロが後ろ盾についてる奴は、多くの機会に恵まれる」
という名言により、これは初手2回チェンジの効果で即決定稿。

だいたいこんな感じにルールは決した。


■バンド役と名言
一番時間を掛けて、一番論争があったのがこれだ。
はじめはロックバンド系で全て埋めてしまおうという方針であったが、
宗氏はどうもこの方針には反対の様子だった。
自分がストーンズやディープパープルを好むサブカルかぶれを
対象にしていた方針に対し、宗氏は
「ライブハウスとは本来、音楽発表会の場のようなものだ」
「音楽はもっと多用なジャンルで語られるべきなんだ」
という熱い意見を飛ばす。
実際にライブハウスで歌ってた奴が言うことだから、
それで正しいのだろう。と自分は納得することとした。
【マーチングバンド】や【ゴスペルバンド】の役が採用されたのはこれに由来する。
また、宗氏はギャグテイストをやたらに好んだ。
それには、何か昔辛いことがあって、笑い話に消化したいというような
重厚な背景を感じたのであまり詮索はしなかった。
これにより採用されたのは 【練習会】と【バンドやろうぜ】。

新装版では拡張扱いのメジャーバンドは
より一層激しい言い争いがあり、とてもじゃないがここでは書けない。
だが、せっかくなので没になった役をいくつか書いておこうと思う。

「長渕剛」「TRF」「サザンオールスターズ」「霜月はるか」
「菅野ようこ」「妖精帝國」「スフィア」「エックスジャパン」
「ビーズ」「モーニング娘」「チャゲアンドアスカ」「スマップ」
「ドリフターズ」

バンドマンカードの下の方に書かれた【名言】も大変だった。
ネット・図書館・人伝手と様々な方法で集めた。
しっかりカードのクラスに合った人選になってるのにお気づきだろうか。
ダンサーの名言とか特に乏しく、パパイヤ鈴木の大抜擢となってる。
菅野ようこと小室哲也の採用が唯一の自分の趣味。
小室繋がりでバンド役のTMNは押し切ったと言っても良い。
最後までTRFとサザンとで揉めたけどネ。


■生産
【TAIBAN】か【TAIBAN!】でタイトルが揉めたが、
意外にも後者を押したのは宗氏の方だった。
さすがにそれは大人気のガールズバンド作品に寄り過ぎだろうということで、
ビックリマークは無くなった。
そして、生産の段階。
リアルギタリストでありながら、印刷屋という
もはやこのために生まれてきたのでは?と疑うほどの宗氏をこきつかって
ハイクオリティのラミネート仕上げで作らす。
(この後、重版の際にあまりに労働だったため拒否される。)


■本番
ゲームマーケット2011春で初出。
瞬く間に売れた。
想定外の反響の多さに伴ない、翌年2012春にも
新装版で出展。これも完売。
華々しい戦果を上げた。


これがTAIBAN制作秘話だ。


ー製作スタッフー

企画 デザイン 
えーおーあい


考証 パッケージング 印刷
宗p


テイルズオブヴェスペリア
あ~る


売り子
ゲットマン
[PR]
by souka_t | 2012-06-02 09:29 | 同人ゲーム制作 | Comments(0)
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