三田誠弘【僕って何】
第77回芥川賞受賞作品。

自分探しをする大学生を学園闘争という舞台上で描いている。
話の構図や人物の配置が物凄く現代のライトノベルっぽさが
ある。初出が昭和52年であるところから、なんらかの転換点に
位置する作品なのではと感じた。

何の志もない男児(主人公)が、ある日クラスメート(いざない手)
に誘われて、学園闘争の幹部の女性と(ヒロイン)出会い、
学生運動に参加し(最初の試練)、格上の委員長と(ライバル)対面し、
幹部の女性といっしょに機動隊から逃避行(第二の試練)。
それから幹部の女性と同棲がはじまり、更に活動に深く関わる
(ヒロインの存在を中核として目的の形成)。
そして、次第に疑問を感じ組織と決別(ヒロインとの別れ)。
違う組織に勧誘され所属する(価値観の反転と新たないざない手の登場)。
更にその活動をするうちに(試練)その組織にも疑問が沸き決別(挫折と別れ)。
身を落としスナックで喧嘩沙汰(最後の試練と意識回帰)。
大学の近くの同棲していたアパートへ戻り大団円(ハッピーエンド?)

あらすじを分解すればこんな具合。
これって、
なよなよした主人公がツンデレの女の子に
引っ張りまわされて次第に仲を深めつつ仲間達の中でも
存在感を高めていき、次第に女の子と衝突して一時別れて新展開。

のようなテンプレの始祖のように感じる。
読んでる途中、ヒロインの声がハルヒの平野綾さんの声で
脳内再生されたものだが、終わってみるとエンジェルビーツのユリっぺ
の方が近いと気づいた。
何と言うか、凄くこう、現代ラノベに至る通過点を担ってる内容に読める。
主人公は学園闘争という学生とその周囲の人達だけのセカイにアクセス
しようとする事で物語が展開された訳で、現代の主人公と彼女とその周り
だけのセカイで展開される俗に言うセカイ系への通過点とも取れる。
そんな類のものはたくさんあるかもしれないが、
第77回の芥川賞でこういった作品が受賞した事に、
自分は異常なほど面白味を感じる。

また、テーマ性も深い。
はじめの母との衝突から、最後に人の中の自分の存在を受け入れる
所まで、かたくなに自分が何なのかを捜し求める模索感は上手く書かれていた。

久々のマイ芥川賞ベストに連なる傑作。
[PR]
by souka_t | 2011-11-05 12:58 | 文学 | Comments(0)
<< セイクリッドセブン感想 ウォールヅ小数部再販 >>