加藤幸子【夢の壁】
第88回芥川賞受賞作品。

敗戦国という立場を子供社会を通して
上手く風刺している。
それだけでも相当に見事な作品なのだが、
物語の面だけを取り出してもよく練られている。
特に大筋である二人の主人公が中国の全く違う
場所や立場で物語が始まり、次第に重なり、
喜怒哀楽を経て、最後に別れが訪れるというのは、
とても大衆小説的というか、馴染み深いものを感じた。

しかし、気になった部分もある。
主人公の一人であるサチが、諸所でフラッシュバックする過去の記憶だ。
最後の、人がすし詰めされてごった返す貨物列車の場面は、
その記憶になんらかの決着をつけるための舞台かと思ったが、
どうも違ったみたいだった。そのせいか、個人的にラストの
モヤモヤ感が強く締りが悪い。それでも全体を見れば充分傑作だと思う。

後で知ったが、この作品2009年に日中合作で映像化されていたんですな。
内容的にドラマ性は高いと思っていたので、機会があれば見てみたい。
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by souka_t | 2011-06-09 02:58 | 文学 | Comments(0)
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