開高健 【裸の王様】
第38回芥川賞受賞作品。

素晴らしい作品だった。
全ての親と教育者は、まずこの話を読むべきだろう。

自分が子供の時、もしもこの主人公のような人物の下で
教えを請う事ができていたならば、どれほどの想像力が
付いただろうか。読中読後は本当にそう想って已まなかった。
そして、物質文明極まる現代に生まれてくる子達が、
果たして本当に幸せなのだろうかと案じてしまう。
戦後少し経ったこの話の本編ですら、絵本という創造力の結晶が
子供達に一足飛びで張りぼてな創造力を与えてしまう事を危惧している。
だとするなら、現代はどれだけの創造力の結晶が充満しているかという
話になる。自らが試行錯誤し到達する創造力の崇高さを教えるのは難しいし、
多くの教育者は向き不向きで数多の素養を分け隔ててしまうだろう。

本編では幾度も子供達に絵を描かせる場面があって、
だいたいが話のテーマとも関連する大事な場面。
それを読んでいて自分も1つばかり昔の体験を思い出した。
あれは小学3~4年の頃だったか、
山を持ち上げる大男が出てくる昔話を読み聞かされて、
それをクラス全員で絵に描こうという授業。
割とありがちな美術の時間なもので、自分は友人らと雑談しながら
絵の具を混ぜて筆を走らせ、無難に仕上げて提出するが、
2人の友人は提出時にこっぴどく先生に叱られてしまった。
1人目の原因は、大男の目と眉を繋げて漫画的表現(ドラゴンボール的)で
描いてしまったから。
2人目は、大男の顔をへのへのへもじで描いてしまったからだ。
今思えば、この2つは創造力の問題を如実に現していると思う。
前者はまさに"裸の王様"で提起されている問題だ。
そして後者は創造すること自体を破棄している例だ。
当時から長い間、この2人は同質のヘマをしたと思い込んでいたが、
今考えてみると全く性質が違う。

歳を連ねて振り返れば、文学を通しての再発見が多々ある。
個人的には今回はど真ん中にきた作品だった。
今のところ芥川作品の中で一番好きかもしれない。
[PR]
by souka_t | 2011-05-19 02:21 | 文学 | Comments(0)
<< 【ボードゲーム】入門・布教向き... 【ボードゲーム】バトルライン >>