石川達三 【蒼氓】
第1回芥川賞受賞作品。

初代芥川賞作品とはいかほどのものかと読んでみたが。
ド直球の社会風刺作品だった。

戦前の日本のブラジル移民というものは、
さすがに教科書上の数行でしか知らなかったが、
これを読むだけで随分と生々しいものが伝わってくる。
現実にあった汚職事件を劇中話題にしているところ等、
まったくのクッションを置かない表現は、
本当に直球そのものだと思う。

多種多様な事情や境遇を盛り込んでいるため、
登場人物の描写は細かく、読んでいる感覚は
驚くほど現代小説に近くて読みやすかった。
先に読んだ39回芥川賞作品の飼育は、
これに比べると大分読み辛いものがあったが、
あちらは創作性の高い話となっていて、
その時々の芥川賞傾向があると窺えた。


本編の話を彩る移民達には思うところがある。
移民達が同じ境遇の仲間達と励まし合い、
意気投合する様は、自分の高校入学したての頃と被る。
あの当時は底辺校に入っちまったからにはしかたねえ、
同じバカ同士仲良くやろうぜ的に、
たった数日でクラスに溶け込んでしまったものだ。
同じ境遇同士というものは感応し易いものなのだろう。
蒼氓-そうぼう- という作品はその雰囲気を
充分に表現されている。
低俗な群集の中にある暖かみを感じる作品だ。
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by souka_t | 2011-01-11 04:03 | 文学 | Comments(0)
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